お風呂場で活躍する「サーモスタット混合栓」適温を保つ仕組みから取替え方法まで
31
2019
Aug
お風呂場などで見かけるサーモスタット混合栓には「温度調節ハンドル」がついており、自動温度調節機能をもっています。水とお湯を切り替える回数の多いキッチンや洗面所にはシングルレバー混合栓が適していますが、お風呂場のように一定の温度をキープしたい場所ではサーモスタット混合栓が便利です。
今回は「サーモスタット混合栓」の適温を保つ仕組みや取り替え方法のアドバイス、意外と知らないプチ情報をSANEI株式会社の吉岡さんに教えていただきます!
シングルレバー混合栓について知りたい方はこちらをチェック
INDEX
「サーモスタット混合栓」が適温を保つ仕組み
お風呂場にある混合栓はサーモスタット式というんですね。すぐに快適な温度のお湯を出してくれますが、コンピューターが内蔵されているんですか?
いえいえ、自動温度調節機能といっても仕組み自体はとても単純なんですよ。
サーモスタット混合栓の内部には「通常のバネ」と「バルブ」と「形状記憶合金バネ」が並んでいます。
え?バネとバルブですか?
はい。「バルブ」は温度調節機能のハンドルと連動して動き、湯と水の量を調整しますが、それだけでは温度を安定させることができません。
そこで活躍するのが「形状記憶合金バネ」です。
形状記憶のバネ…?
「形状記憶合金バネ」は、温度が低くなると自動で縮み、湯の量を増やします。
逆に温度が高くなると自動で伸びて、湯の量を減らすんです。
(イラストをクリックすると別タブで画像が開きます)
え、バネ?と思いましたが、すごく賢いバネなんですね。
はい。この「形状記憶合金バネ」の働きによって、あらかじめ設定した温度を保つことができるんです。
自分でできる!ツーバルブをサーモスタットに交換
シングルレバー混合栓は自分で交換できるとお聞きしましたが、まさか、これも替えられますか?
はい、できますよ。お風呂に壁付けされているツーバルブ混合栓を、サーモスタット混合栓に変えることも可能です。ただし、しっかりと要点をおさえてからチャレンジしてくださいね。
では、早速教えてください!まずは、古い本体の取り外し方ですね。
大事なのは、「止水栓を止めること」です。
シンク下に止水栓がついているワンホール混合栓と違い、家庭に供給される水の元栓を締めなくてはいけません。
水の元栓って、どこにあるんですか?
マンションなどは玄関の外に「止水栓ボックス」があります。一戸建ての場合は、水道メータの横についている場合が多いです。万が一、止水栓の場所がわからない場合は、水道局に問い合わせてください。
それだけ大事な工程ということですね。
次にレンチなどでナットをゆるめ、本体を外します。
足部分(偏心管)を持って、グルグルと回し外します
水垢などのせいで固くなっている場合があります。無理矢理外そうとすると配管を傷める可能性があるので注意してください。
取り外すと穴がみえますね。
はい。穴が2つ見えますので、古いハブラシなどでキレイに掃除してください。
いよいよ、本体取り付けですね!
すぐに取り付けるのではなく、偏心管が何回転入るかを確認します。
実はこの回転数の確認はとても重要なので、必ず行ってくださいね。
あとで必要になるということでしょうか?
はい、そうです。ちゃんと覚えておいてくださいね。
次に、シールテープを偏心管のネジ部分に巻きます。ネジ部分全体に巻く必要はありません。シールテープを引っぱりながら同じ部分に重なるように約6回程度巻いてください。
ここでさっきの回数が必要になります。シールテープを巻いた偏心管を、確認した回転数より1回少ない程度に、穴に入れて回してください。
両方の偏心管の角度に注意してくださいね。これがキレイに付けられるかどうかのポイントになります。(イラスト参照)
右と左の偏心管が壁と並行になっているかも確認しましょう。
この斜めの位置が大事なんですね。
ここまでできたら、あともうひと息です。
パッキンを本体偏心管にセットし、本体をお湯側(左側)の偏心管に時計回りに差し込み仮止めの状態でストップします。
お水側(右側)の偏心管にも同様に差し込み仮止めの状態でストップしてください。
お互いが仮止めの状態から、絶対に逆回りしないように注意しながら、本体が水平になるよう調整します。
失敗したらやり直しできますか?
時計回りと逆回転すると、水もれ防止のシールテープがゆるむので、やり直しはしないでください。万が一逆回転した場合は、シールテープを巻きなおすところからやり直す必要があるので注意してください!
ここは慎重な作業が必要ですね。
最後に蛇口のパイプを上に押し上げながらナットを締めます。
そのあと、シャワーホースとシャワーヘッドを取り付けてください。偏心管と壁の間に隙間がある場合は、座金を締めておきましょう。
これで完了ですか?
すべてが完了したら止水栓を開き、水もれがないか確認してください。見た目には気づかなくても、じわっとしみ出している場合もあります。できれば取り付けた翌日、再度水もれがないか確認してください。1日たって、どこももれていなければバッチリです!
少し複雑なところや注意点が多かったですが、この通りにやればできそうですね。
水もれ防止のために重要なチェックポイントが多く、特に仮止めの状態からの工程はとても慎重な作業が必要です。でも、この作業をグンとラクにしてくれる「ベンリー偏心管」という優れモノがあるんですよ。
ベンリー偏心管ですか?
従来の偏心管は一体型になっていますが、ベンリー偏心管は壁につく部分だけが固定され、それ以外の部分は独立しています。だから、偏心管を取り付けた後に360度自由に回せるようになっているんです。取り付けに慣れていない方にもオススメですよ。
お~それは便利そうですね!
「温度調節ハンドル」は自分で設定できる!
ところで、サーモスタット混合栓の温度調節ハンドルは、パカッと外して自分で設定できること、ご存じですか?
いえ、知りませんでした。使っているうちに、あれ?なんとなく温度がおかしいなぁ~というときは、故障じゃなくて、自分で設定できるんですね!
以下の手順で解決できますよ。
- 目盛に関係なく、ご家庭での適温が出る位置にハンドルを回します
- その状態のまま、温度調節ハンドルを本体から引っぱって外します
- 目盛の40の文字と温度表示リングのポイントを合わせて温度調節ハンドルをはめます
へぇ~簡単ですね!
ハンドルはカチッと音がするまで差し込むようにしてください。
実はこれ、取扱説明書に書いてあります。この説明文は、SANEI株式会社製サーモシャワー混合栓の取扱説明書を参考にご説明しましたが、他のメーカーのものにも記載はあると思うので、一度確認してみてください。
そうですね。取扱説明書を読むって大事ですよね。今は紙のものをなくしても、ネット上で見られることも多いですし。何か困ったときは取扱説明書を見るくせをつけておくと、よさそうですね。
水栓もDIYで交換できる!ものづくり以外もぜひチャレンジしてみては?
水回りの作業って、プロじゃないとできないと思っていましたが、水道が通っている状態で器具を交換するだけなら、自分でもできるんですね。
このことを知らなかったという方も多いと思いますので、今回はとても勉強になりました! あと、困ったときはまず「取扱説明書を読む」というくせをつけておくと、DIYの腕が少しずつ上がっていきそうですね。
※この記事の内容は、2016年12月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。