夜道の安全を守る「再帰反射材」蛍光と蓄光との違いもチェック!
23
2020
Jun
夜道を歩くときに役立つ再帰反射材。自転車のペダルなどについている、アレです。 今回はご本人みずから「反射材のヘンタイです」とおっしゃるほどの反射材博士、Mipox(マイポックス)株式会社レフライト推進室 平野信義さんに「再帰反射材」についてお話をうかがいました。
INDEX
まずは「反射」「蛍光」「蓄光」の違いを理解
反射材というと、「暗いところで光るもの」とか「蛍光色の派手なヤツ」とイメージされていませんか?
え? まさにそういうイメージです。違うんですか?
実はそれ「再帰反射材」と「蛍光素材」「蓄光素材」を混同されていると思います。それぞれ「どんなときに光るか」で区別することができます。
再帰反射材 | 蛍光素材 | 蓄光素材 | |
---|---|---|---|
光るのはどんなとき? | 光をあてたとき | 日中の紫外線に反応したとき | 光エネルギーを蓄積し周りが暗くなり発光したとき |
どんな物に使われる? | 自転車のペダル 道路標識 衣料・鞄・靴・帽子など ※暗い夜に、光を当てて目立たせたい場合に使用(光を当てないと目立ちません) | 看板 ヘルメットなど ※明るいところで目立たせたい場合に使用(暗い場所では見えません) | 防災・避難関連 非常口など ※主に停電など急に暗くなった室内で目立たせたい場合に使用 |
なるほど。「反射」「蛍光」「蓄光」でそれぞれ光る条件や用途が違うわけですね。
この違いを理解したうえで今日は「反射」についてたっぷりとお話を聞いていきたいと思います。
自然界の光の反射には「乱反射」「鏡面反射」「再帰反射」の3つがあります。
今回お話しするのは、市販されている反射材。これは、光源の方向に光が戻るという再帰性反射を利用しているので、「再帰反射材」といいます。
光が当たった方向にそのまま反射するということですね。
再帰反射材2つの構造「ガラスビーズ型」と「プリズムレンズ型」
再帰反射材は大きく2つの構造にわけることができます。
それが、「ガラスビーズ型」と「プリズムレンズ型」です。
まずガラスビーズ型 は、1㎠の中に約1万個の真球のガラスビーズが敷き詰めてあり、ガラスビーズに光が入射し、反射させることで光ります。
1㎠の中に1万個のガラスビーズですか!
ちょっと想像もつかないですが、なんだかすごそうです。
ここからさらに、ガラスビーズ型は3種類にわかれます。
ガラスビーズ型
封入レンズ型 | カプセルレンズ型 | 露出レンズ型 |
---|---|---|
ガラスビーズの表面を、透明で平滑な樹脂層が覆っています。 明るさは、3つの中では一番低いのですが、表面が覆われている分、汚れにくいという特徴があります。そのため、道路標識やナンバープレートなどとして使われています。 | 樹脂層で覆ってはいますが、ガラスビーズの上半球が露出しているため、封入レンズよりも明るくなります。 | 樹脂層で覆っていないため、もっとも明るい反射材です。 洗濯性や柔軟性に優れているので、ワーキング衣料やスポーツ衣料に使われています。 ただ、構造上水中や水滴がついた部分は反射しませんが、表面が乾くと反射性能は戻ります。 |
プリズムレンズ型は、ガラスビーズとは違い、三角すいの形をしたプリズムレンズで反射させます。プリズムレンズ1㎠の中に、約7,400個のマイクロプリズム素子が配列しています。
三角すいの形をしたものがあるんですね。
プリズムレンズ型はさらに2種類にわかれます。
プリズムレンズ型
カプセルプリズム型 | マイクロプリズム |
---|---|
表面(プリズムレンズ)と基材の二層からなり、間には空気層が含まれます。空気層が入っている分、マイクロプリズムより明るさは足りません。 | 表面(プリズムレンズ)にアルミ蒸着させて一体化し、一層にしています。反射すると非常に明るいのですが、昼間は目立ちません。 |
反射材にこんなに型や種類があるとは知りませんでした。
それぞれに明るさや用途が違うんですね。
形だけじゃない!ガラスビーズ型とプリズムレンズ型の大きな違い
ガラスビーズ型とプリズムレンズ型には、ほかにも大きな違いがあります。
それは「斜めからの反射」に対して、ガラスビーズ型は強く、プリズムレンズ型は弱いという点です。
ガラスビーズ型の方が斜めからの光にもよく反射するんですね。
球体なのでどの角度から入る光でも反射しやすいというイメージですかね?
そうです。
実績例として、高速道路料金所入り口に設置されている車両誘導分離帯(船形と呼ばれる先端部分)や中央分離帯、クッションドラム(衝突防止緩衝材)など円形、円筒の丸い形の道路施設においてガラスビーズ型が活躍しています。
夜間、正面からの反射だけでは、分離帯や製品の横幅が把握しきれず接触事故につながる恐れがあります。
この場合、斜めからの反射にも対応できることが重要なんです。
「JPマーク」ってなに?失敗しない再帰反射材の選び方
再帰反射材には、主に5つの種類があるということがわかりました。
教えてもらった特徴を参考にして、用途に合わせて選ぶことができそうですが、反射材を選ぶ際のアドバイスなどはありますか?
はい。大切なのが反射材の質です。
一見、同じような再帰反射材であっても、光り方や耐久性には違いがあります。
これはメーカーや製品ごとの品質の違いということでしょうか?
そうです。これを見分けるために「JPマーク」がひとつの目安となります。
「JPマーク」とは、一般社団法人 日本反射材普及協会が審査認定した「反射効果の高い製品に付与されるマーク」なんです。
「JPマーク」が付いていれば、より精度の高い再帰反射材と考えていいんですね。
はい、信頼できます。
また、最近はワーキングアパレルやスポーツアパレルでも、高視認性安全服の国際的なISO規格(EN ISO 20471)や日本のJIS規格(JIS-T8127)などが普及し始めています。
そうなんですね。
夜間にランニングなどをされる方はこういったことを参考にスポーツウェアを選ぶといいかもしれませんね。
防犯や防災にも!暮らしに役立つ反射材
道路上や海上、人の安全だけでなく、防犯、防災、など幅広く私たちの暮らしに役立っている反射材。
普段はあまり意識することがありませんが、これをきっかけに身近にある反射材をチェックしてみてはいかがでしょうか?
再帰反射材の構造や特徴を理解できたことで、実際に自分が使ったり身につける場合も用途に合った最適な反射材を選ぶことができそうですね。
※この記事の内容は、2019年3月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。