思い込みから解放された瞬間、新しいDIYがはじまる! 〜アイデア商品『飛沫防止パーテーションサスだけ』誕生秘話
06
2020
Jul
自粛制限、在宅勤務が推奨されていた2020年4月末頃のこと。滋賀県にある和気産業の日野物流センターでは、このような会話がされていました。
今井さん、うちらのデスクもそろそろコロナ対策したほうがいいですよね。どうしましょう…。
ほかの事務所は天井から透明のシート吊るしているらしいよ。
う〜ん、シートはなぁ…。これから暑くなるのに風通しが悪くなるのイヤですよねぇ。
この先続くであろうコロナと共存する新しい未来に向けて、職場の対策をしようと考えた私たち。
ちょうど同じ頃、今井は某配送業者から「営業所用に、和気産業取り扱いアイテムですぐに設置できるような飛沫対策のパーテーションはないか?」という相談も受けていました。
和気産業はDIYの専門商社。とりあえず倉庫に行って何か材料になるものがないか探すことにしたのです。
INDEX
倉庫をぶらぶら…掘り出し物を見つけた!
まずは、パネル。
透明なもの、擦りガラスのようにくもったもの、色付きのもの、薄いもの厚いもの、サイズも大小さまざま、たくさんの種類があります。
社内のデスク周りに使うものだし、できるだけ安いほうがいいですよね。
そりゃそうだよね。見た目も大事だけど、大きいサイズはやっぱり価格が高いな〜。
くもったやつ(スリガラス風)なら少し安いですよ。でも、向こう側が見えないと圧迫感がありそう。
見て! こんな透明のパネルもある。塩ビ? ちょっと柔らかいけど。
中空ボードなら安くてちょっと透けてる感じ、半透明ですよ。これいいんじゃないですか!
掘り出し物を探すかのように、倉庫の棚からあれやこれやと出しては片付け、出しては片付けを繰り返し…。ようやく候補となる4種類の素材を選びました。
DIYはアイデア勝負!掘り出し物を見つけるコツは思い込みを捨てること
次は、パネルを立てるためのスタンドです。
対面は幅90cm、高さ60cmのボードがジャストサイズのようなので、そこそこ安定感のある土台が必要です。
棚受けがいいんじゃないかな? いろんな種類や大きさの棚受け金具があるし。L字の棚受けでボードをはさむように固定すれば安定するんじゃない?
そうですね〜。L字の棚受けをスタンドに使うと、デスクとの設置面の足が結構じゃまになりそうな気が。でもまぁ、見た目シンプルなものを選べばいいのかな。
あれやこれとお互い物色していたときでした。
これどう?? サスキー!
ああ、鍵の先端を隙間にさして保管するやつ! 懐かしいですね〜。
『サスキー』とは、樹脂素材を壁に接着し、その隙間に鍵を『サシ』て管理するという斬新なアイデアのもと、数年前に開発された当社のプライベートブランド商品です。
ここのすき間にボードをさして、立てるってことですね! 裏面には粘着テープもついているし、使えるかもしれないですね!
実は試行錯誤の時間が楽しい!
事務所に戻り、さっそく実験です。
まずは、サスキーを土台として大判ボードが自立するのかどうか。
思った以上に安定してボードを自立させることができ、今井も私も「これ(サスキー)使える!」と確信しました。
さらに実験を進めた結果、以下のことが判明
サスキー
- 大判のボードにはサスキー1個を真ん中に使うよりも、両端で支えるほうが安定する
- サスキーは樹脂製なので、半分にカットして使う方法もある
- デスクの側面に使う場合は幅45cm×高さ60cmが最も安心感がある
- 側面用サイズなら、サスキーは1個で十分
- ボードに身体や手が当たってもユラユラ揺れるだけで、サスキーから外れたり倒れたりしない
- サスキーの底面の粘着が、思った以上に強粘着である
ボード
- イメージどおり、透明が一番しっくりくる
- すりガラス風の向こう側が透けて見えないタイプは、ボードに囲まれると圧迫感がある
- 透明でも塩ビ素材のものは厚さが2mmだったので、手や身体が当たると倒れさえしないものの、ボードが大きく揺れ不安定になる
コストも考え最終的に選んだのは、半透明の比較的安価な素材『ポリカ中空ボード』。向こう側の様子がなんとなく見えるし、圧迫感もありません。
『ポリカ中空ボード』とは、屋根に使い太陽光を取り入れたり、園芸ハウスに使われたり、建具として活躍したり、看板にしたり…屋外でも屋内でも幅広い用途で使われているもの。
丈夫で燃えにくいという安全性に加えて、過酷な温度環境に耐えられる耐候性もあり、長期的に透明感も持続できます。おまけに中空構造のため、中は空洞。軽くて、施工も簡単にできてしまうというもの。UVカット効果もあります。
ついに完成!YouTubeでお披露目!?
じゃじゃ〜ん! 当初、私たちがイメージしていたものとは異なる斬新な組み合わせによって、完全オリジナルのパーテーションがここに誕生しました。
さっそく営業マンに感想を聞いてみたところ、反応は上々。お店でも売れるんじゃないかという感想もありました。
一方私は、「倉庫にあった商品でこんなパーテーションが出来ちゃいましたよ、いかがでしょう?」という軽いノリで作った動画をYouTubeにアップしてみることに。
動画を公開して数日…
ん!? サスキーの飛沫防止パーテーション動画、案外見られていますよ!
パーテーションを自作する動画はもともと数件ありました。でも、私たちが考案した施工せずにボードをさすだけで完成するタイプのものは他になかったからでしょうか。
急激に視聴数が増え続ける状況をみて、もしかして世の中の人は私たちが思っている以上にすぐに作れるパーテーションを必要としているのでは? と考えた上司。
約一週間ほどで、サスキーを使ったパーテーションをキット商品として商品化するに至ったのです!
もう一つ、いいものマガジン編集長である鈴木の、飲食店を経営されているお友だちからも、飛沫パーテーションについて相談を受けたことも後押しとなりました。
お客さまの困りごとを解決するのも、私たちの仕事
お客さまの生の声を聞くことにより、キット化の過程では使用するボードをさらに検討しました。
透明のボードとしてコストの高いアクリル板を採用するのではなく、アクリル板に次いで透明度の高いペット樹脂材のプレートを採用。
透明度は劣らないのに、アクリル板より燃えにくく、より良い素材を使うことができました。
中空ボードは端をマスキングテープで保護する提案をしたり、角を保護する用の溝ゴムをサービスで付属したりするなど、飲食店やオフィスでも使ってもらいやすようにしました。
問題解決に知恵をしぼる!この行動こそが新しい発想を生む
一番感動したのは、今井が本来の使い方とは異なる使い道をふと閃いたということ! 問題に直面したときこそ、知恵をしぼることで新しいアイデアが生まれるのだということを実感しました。
不便の解消は和気産業が常々取り組んでいることですが、今回は緊急事態ということもあり、より深く考えると同時に、よりスピーディーに実行できたのではと思っています。
私はこの体験を通じて、もともと自分の中にある思い込みに縛られず、臨機応変に、また自由に思考を巡らすことが、DIYを楽しむコツだと感じました。自分たちの環境をよくするために、自分たちの手で何かを作ったり変えたりするのは、とても達成感があり楽しい時間を過ごすことができます。
みなさんも大きな問題に頭を抱えるだけでなく、新しいアイデアが生まれるチャンスと考え、前向きにチャレンジしていただければと思いました。
※この記事の内容は、2020年5月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。