防災フィルムのメーカーが警鐘を鳴らす「災害対策の窓ガラスに養生テープ」の問題点とは
13
2020
Sep
2019年、台風などの防災対策に「窓ガラスに養生テープを貼る」という方法が手軽でよいという話がでました。多くの方が実践しSNSにアップしているのを、目にした方も多いのではないでしょうか。
ただしこの方法、防災フィルムのメーカーさんからするとNGな方法。その理由を示す検証動画もたくさんでています。
それなのに、「何もしないより、多少は効果があるのでは…?」と思っている方が、まだ多いようです。
そこで今回は、窓ガラスのフィルムでおなじみのリンテックコマース株式会社のコンシューマー営業部大阪営業所長、吉田和弘さんにお話をうかがいました。
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養生テープに効果なし!「やる意味ありません」
養生テープというと簡単に貼れて簡単に剥がせますから、窓ガラスが割れないように、台風の日に急きょ貼ってみたという人が多かったようですね。
そうなんです。その話を聞いて驚きました。実はここには2つの誤解があるんです。
1つめは、窓ガラスに何か貼るのは「割れを防ぐため」ではなく、「割れたときにガラスの破片が飛び散り怪我をするなどの二次被害を防ぐため」であるということ。
なるほど。まず目的が違うってことから誤解されている可能性があるんですね。
そしてもう1つは、「ガラスの破片が飛び散るのを防ぐため」の目的だとしても、養生テープは意味をもたないということ。なぜなら養生テープ(マスキングテープ)は、塗装の際などに周りを汚さないための粘着テープであり、補強などの要素はないからです。
確かに弱そうですが、何もしないより幾分かはマシではないですか?
そういうイメージをもたれている方も多いと思うので、弊社でも実験してみたんです。
実験の内容は、60×30cm角の木製枠をつけた板ガラスに、1メートルの高さからレンガ片(640g)を落とすというものです。
その結果、全く対策なしの窓ガラスは、もちろん粉々に割れました。
そしてみなさんがイメージされている米印のような形で養生テープを貼った窓ガラスも、ほぼ同じくらい割れてしまったんです。
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わ、ほんとだ! 養生テープが切れちゃうんですね!
そうなんです。手で簡単に切れることも養生テープのメリットです。ただ言い変えれば台風などで何か物がぶつかるなどすれば、簡単に切れてしまうということです。
確かにそうですよね…。
最近は養生テープ以外にも、粘着テープを使うという方法を推奨するような実験も行われているようですが、我々の知識で考えると、問題があると思っています。
窓ガラスへの防災対策に有効なのは?
養生テープをはじめ、さまざまな粘着テープは、災害時に窓に貼ったとしても「切れてしまう」という点から考えると、意味がないということですね。
ではやはり吉田さんのお立場からすると、対策としてもっとも有効なのは、窓ガラス用の防災フィルムを貼ることでしょうか?
それもありますが、個人的に一番おすすめなのは、雨戸です。ガラスフィルムは、窓ガラスが割れても破片が飛び散らないようにするのが目的ですが、雨戸なら窓ガラスが割れること自体を防げる可能性が高いですからね。
なるほど。でも、うちは全部の窓に雨戸がついているわけじゃないんですよね。雨戸があるところは使いますが、それ以外にも道路に面した場所にある危なそうな窓ガラスがあります…。
そうですね。そういう窓にはぜひ、防災フィルムを貼っていただきたいのですが、確かに面倒…というお声もあると思います。貼る際にはコツも必要ですし。だからこそ、簡単に貼れる養生テープが広まってしまったと思うんです。
そこで弊社は「ガラスフィルムより簡単に貼れて、しっかりと防災対策できるものが作れないか?」と考えました。
そして2020年発売にこぎつけたのが、『ガラス飛散抑止テープ』なんです。
窓ガラス用の防災フィルムとどう違うんですか?
防災フィルムとまったく同じフィルムを、テープ状に加工したものです。日本工業規格「JIS A 5759 建築用窓ガラス用フィルム」の合格品なので、安全性はバッチリです。
先ほどご紹介した実験と同じものを、このテープでも行った結果が以下のとおりです。
(クリックすると別タブで開きます)
おーさっきとは全然違いますね! レンガがテープで止まって落下しないなんて。テープが切れないという時点で、養生テープや粘着テープとの違いは歴然です。破片も飛び散りにくいというのがよくわかりますね。
そうなんです。ハサミが必要だったり保護フィルムを剥がしたりなど、もちろん養生テープほど簡単ではありませんが、窓ガラス全面に貼るよりは手軽です。ガラスフィルムを貼るのに二の足を踏んでいて、養生テープを貼ろうかと思っていた方には、ぜひ試していただきたいです。
ホントですね。とってもよさそうです。品質は防災フィルムとまったく同じなら、もうフィルムは必要ないってことですか?
いえいえ。対策として本格的にやりたい方には、断然、防災フィルムを全面に貼ることをおすすめします。結局は一長一短ということなので、それぞれのメリット・デメリットを知って選んでいただくのが一番かなと思いますね。
養生テープ | ガラス飛散防止テープ | 防災フィルム | |
---|---|---|---|
防災効果 (窓ガラスの飛散防止) | 効果なし | 効果あり ただしテープを貼っていない箇所にピンポイントに当たると飛散の可能性あり | 効果あり 窓ガラス全面に貼るため、効果は最も高い |
即効性 | すぐに貼れるが効果はない | 水を使わずに貼れるので、貼ったあと、すぐに効果が期待でる | 水を使って貼るため、貼ったあと水分が蒸発して密着するまで効果がでない。 目安として夏は1〜2日、冬は1週間程度 |
貼る際の手軽さ | とても簡単 | 保護テープを剥がすだけなので、比較的簡単 | 水を使うなど、コツが必要 |
剥がす際の手軽さ (すぐに剥がす場合) | すぐに剥がせる | 剥がせるが、ノリ残りの可能性あり | 剥がすのは難しく、ノリ残りの可能性もある |
剥がす際の手軽さ (時間がたった場合) | 1年など時間が経ってしまうと剥がすのは難しい | 剥がせるが、ノリ残りの可能性あり | 剥がすのは難しく、ノリ残りの可能性もある |
費用 W1,690×H2,030mm の掃き出し窓2枚分の場合(※和気産業調べ) | 250〜300円程度 ※2,339cm使用として計算(1巻25M ) | 1,428円(税別) ※2,339cm使用として計算(1巻10M×3) | 5,291円(税別) |
ありがとうございます。このようにまとめていただくと、選びやすいですね! 剥がす際の手軽さも比べていただいていますが、防災フィルムの場合、貼りっぱなしにしておくのはダメなのでしょうか?
貼りっぱなしで問題ありません。「防災フィルム」はそもそもガラス全面に貼りますし透明ですから、養生テープのように外観を損なうこともありません。『ガラス飛散抑止テープ』も透明なのでそこまで気にはならないと思います。
なるほど。時間がある方やDIYが得意な方などで、剥がす必要がないなら「防災フィルム」がいいかもしれませんね。
でも私なんかは不器用なこともあり、『ガラス飛散抑止テープ』を使いたいです(笑)。
はい。買うだけ買って貼っていない…という方もなかにはいらっしゃるので、まずは手軽に対策できる方法として、今後はぜひ『ガラス飛散抑止テープ』をご活用いただければと思います。貼ったらすぐ効果がでますので、台風が来る前にぜひお試しいただければと思います。
台風をはじめ、日本は自然災害の多い国ですから、みなさんもぜひ使ってみてはいかがでしょうか!
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※この記事の内容は、2020年8月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。
今回の記事中でしばしば「効果がない」という言葉を使っています。この表現については「対策しないより、よいのでは?」というご意見もいただいています。しかし、いいものマガジン編集部としては、お使いいただいている方々の安全面から「適切な効果が得られない」と判断し、このような表現をしております。趣旨をご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。