災害時に本当に役立つの?「携帯トイレ」についてケンユーさんに聞いてみた!
25
2021
Aug
非常用袋の中に携帯トイレは入っていますか?
その携帯トイレを使ったことはありますか?
「用意はしているけれど、使ったことがない」という方も多いのではないでしょうか。いいものマガジン編集部員も「持っているけど、使ったことはない」という人がほとんどでした。 そもそも携帯トイレって、どういう仕組みなのでしょうか。今回は「ポリマー(高分子吸水樹脂)」を使った携帯トイレについて、株式会社ケンユーの営業本部部長、三原資司さんにおうかがいしました!
INDEX
ポリマーって何?
ポリマーを使った携帯トイレ、何となくイメージはできますか?
ポリマーって、おむつや生理用品、ペット用シーツなどに使われるものですよね。でも、ポリマーってそもそも何なのか、よくわかりません。
ポリマーとは「重合体」のことで、単量体モノマーが数百個以上つながったもののことを指します。ポリマーの種類として、プラスチックや樹脂があります。車のポリマー加工の「ポリマー」も、言葉の定義としては重合体という意味になります。
ポリマーといっても、いろいろあるんですね。なんだか難しい…。
ポリマーは製品化され、いろいろな形に仕上がっていきます。今回は携帯トイレについて説明しますので、「高分子吸水樹脂」のことをポリマーと表現しますね。
高分子給水樹脂というと、「水を吸収する分子」って感じでイメージやすいです。
実は、この粒が水分を吸って固まるというよりは、「水分をポリマーの樹脂が覆ってジェル状にしている」と表現するほうが正しいんです。
逆にいうと、水分を覆うのには限度があるので、許容範囲を超えるとジェル状になったものが、水に戻るという現象が起きてしまいます。
おむつをしているのに、漏れちゃった…という話を聞いたことがありますが、そういうことですか?
はい。おそらく吸水の許容範囲を超えてしまったのだと思います。
ポリマーを使った携帯トイレは本当に安心?
許容範囲を超えると水に戻ってしまう…と聞くと、本当に使えるのかなぁとちょっと心配になっちゃいますね。
ポリマーを使った「携帯トイレ」といっても、さまざまな製品があります。ケンユーの『携帯ミニトイレ プルプル』は、受け口のついたファスナー付きの袋の中に、ポリマーの粒が入っています。別の会社さんの製品ではポリマー入り凝固剤が入ったものや、袋自体がポリマー素材でできているものなどもあります。
いろんな種類があるから、自分が用意する携帯トイレの性能をあらかじめ知っておくと安心できそうですね。
私はホームセンターと100円ショップでも購入してみました。形状や仕組みは似ていますが、自分に合っているかどうかは、使ってみないとわからないですよね。
実際に使ってみることは大切ですね。最近は、携帯トイレの実証実験をしている動画がアップされているので、参考になります。でも注意していただきたいのは、「その実験に使っている水は何か」ということです。
水での実験ではダメなんですか?
高分子吸水樹脂は、水の吸収は簡単にできます。しかし尿のように塩分を含んでいる場合、水ほど簡単に吸収することはできません。だから、尿に近い生理食塩水で実験したほうがより安心だと思います。
確かにそうですよね! 生理食塩水を何ml用意したらいいでしょう?
500mlで実験されるとよいと思います。
なぜ500mlがいいのでしょうか?
通常成人の1回の尿量は200~400mlとされており、販売されている1回分の携帯トイレも、その量を想定して作られています。だから、500mlが吸収できれば、かなり安心できると思います。
編集部で実験してみた!
ではさっそく、あらいもんとにピ、実験をお願いします!
ケンユーさんの携帯ミニトイレぷるぷるを使用します。
まず、500mlの食塩水(約43℃)を用意します。わかりやすいように色づけしてみました。
注いだあと数秒でこのくらい固まります。
凝固剤で固めるというので、油を処理するときのような固形をイメージしていました。少し違いますね。
はい。三原さんの説明にあったようにジェル状というのが近いですね。
私たちの実験と同じような結果になりましたね。
ただ糖尿病の方や薬を服用されている方など、尿に他の成分が含まれる場合、凝固が難しい場合もありますので、ご注意ください。
なるほど、そのようなこともあるんですね。じゃあ、いざというときのために事前に試しておくって本当に大事ですね。
そうなんです。病気の種類、服用している薬の種類だけでは判断することが難しいため、ご自身の身体で試していただきたいですね。
私たちも実際に試してみました!
気になるニオイは?
携帯トイレの始末の仕方も想定しておこう
これで防災時も安心して使えそうです。
いえいえ、防災グッズとして考える場合、後処理の方法も、きちんと知っておいていただきたいです。基本的には袋に入れて中身が漏れないようにしたうえで、各自治体のごみ処理方法に基づいて処分すればOKです。
余談になりますが、近年ペットボトルに入れた尿を、高速道路のインターチェンジ付近に捨てたり、サービスエリアのゴミ箱に捨てたりという事象が起こっているそうです。そんな方こそ携帯トイレをご利用いただき、モラルを守っていただきたいと思います。
使えないと意味がない! 家族全員で試してみよう
携帯トイレの性能と処理方法、これだけ知っていれば万全ですね。
いや、そうとは言い切れません。
一般に販売されている携帯トイレの多くは、「大人・子ども兼用」となっています。ただ、同じものを使っても、男性、女性、子ども…それぞれが、上手に使えるとは限りません。
例えばお子さんの場合、袋をあてて尿をするということ自体、うまくできないことがあります。
災害時など、ただでさえ精神面が不安定なときにトイレがスムーズでなければ、相当なストレスになりそうですね。
そうなんです。だから家族全員がそれぞれ、携帯トイレを実際に試していただくことをおすすめします。
携帯トイレには、さまざまな種類があるからですよね?
そのとおりです。たとえば『ニューミニマルちゃん』という簡易トイレがあります。これは段ボールで組み立てられ、そこに座って用を足せるタイプなので、小さなお子さんにも比較的使いやすいと思います。
実践しておけば、いざというときに困らないですよね。防災グッズすべてに通じることかもしれませんが、「試しておくこと」って大事ですね。
はい。先ほどお話ししましたが薬を服用中の方など尿の成分によっては固まらない場合もあります。いざというときに困らないよう、確認しておかれるとよいと思います。
ほかにはどんな携帯トイレが?クレームから生まれた製品の数々
ケンユーさんは、古くから携帯トイレの販売を行っていらっしゃいます。他にはどんな「携帯トイレ」や関連グッズがあるんですか?
実は通常の携帯トイレと同じ作りで容量が1000mlという、 『プルプル1000』という製品があります。
え、1000mlですか? 通常成人の1回の尿量は200~400mlでしたよね。
実はあるお客様から「通常サイズを使ったら、尿が漏れてしまった」というクレームをいただいたことがあったんです。尿量はあくまでも平均ですから、困っている方がいらっしゃるならと、大容量タイプを開発したんです。
なるほど。体型や体質によって、尿の量は必ずしも平均値どおりとは限りませんよね。
ほかには『ベンリーポンチョ』や『ベンリーテント』など、屋外でのトイレを目隠ししてくれる製品もそろっています。
ポンチョは雨具などでも代用できそうですが?
最初は私たちもそう考えたんです。ところが、市販のポンチョで実験してみると、「長さが足りない」「横から見える」などの問題が発覚したんです。そのため、基本的にどんな方が着用しても完全に目隠しでき、めくれる心配もない、誰もが安心して使えるものという観点で開発しました。
なるほど、なるほど。「一人でも多くの方に満足していただける製品を届けたい!」そんな思いが形になって、現在のラインナップになったわけですね。
携帯トイレを用意される際には、ぜひいろんな製品を試して、ご家族にぴったりのものをご用意ください。
※この記事の内容は、2021年6月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。