プロのアドバイスから考える防災グッズの中身ーいいものマガジン編集部が考える防災「非常用持ち出し袋編」
16
2021
Sep
非常用持ち出し袋の準備をしていますか?
内閣府が2018年に発表した防災に関する世論調査の結果によると、「家族や身近な人との話し合いを行なった人」は約半数の57.7%。その中で「非常持ち出し品」について話した人は41.7%という結果でした。
非常持ち出し袋は用意したほうがいいんだろうなぁと思いつつ、「何を用意したらいいかわからない」という人も多いと思います。また、とりあえず用意しようと、セットで販売されている「非常用袋」を購入したという人もいるのではないでしょうか。いいものマガジン編集部員たちも、似たような状況でした。
用意することはもちろん大切。でも一般用のセットを購入したからといって、十分とはいえないようです。いいものマガジン編集部では、改めて非常用持ち出し袋について真剣に考えてみようと、一般社団法人防災備蓄収納プランナー協会の代表、長柴美恵さんにお話をうかがいました!
長柴美恵さん
2006年3月に「収納ドクター」の看板を立ち上げる。整理収納お片付けコンサルタントとして、一般家庭から企業まで活動の幅を広げた。東日本大震災後、収納アドバイザーたちに呼びかけ、ボランティアで「東北応援チーム」を作る。仮設住宅での収納作業など5年にわたる活動の中で、災害対策と防災備蓄の必要性を強く実感したことから、2016年6月に「防災備蓄収納プランナー協会」を設立。防災備蓄が当たり前の日本を目指し、活動を続けています。
INDEX
非常用持ち出し袋って何?
今回は「非常用持ち出し袋の準備」という観点から、長柴さんにお話をうかがいたいと思っています。
まず、非常用持ち出し袋って、どういうものだと思いますか?
災害が起こったとき、ライフラインが止まるなどして通常の生活が送れなくなった場合に備えるものを入れておく袋…でしょうか。
それは、非常用の備蓄全般というイメージですね。今回ご説明する「非常用持ち出し袋」は、あくまでも移動用として考えます。
たとえば、自宅が危険でより安全なところに移動する、職場が危険でより安全なところに移動する、職場から自宅へ移動する…などです。
なるほど、災害が起こったとき、どこにいるかわかりませんよね。移動用という観点から考えるわけですね。
はい。使う場合の想定としては、
・安全な場所までの道中で使用
・移動先で使用
・一時しのぎ
です。
避難所も同じ被災地ですし、混乱しています。物資はすぐにもらえないと考え、みずから備えるということが必要になります。
非常用持ち出し袋の中身は一人ひとり違う
避難所にいけば大丈夫という考え方は、違うってことですね。
肝心の中身ですが、一般用にセットで販売されているものもありますよね。まずは、ああいったセットを一つ持っておくことって大事ですか?
そこなんです。私も勉強するうえで、一般用として販売されているセットを購入したことがあります。ただ実際に中身を確認すると「自分には必要ないかな」というものもたくさんありました。
もちろん、その非常用袋の中身が悪いわけではなく、私が必要ないと思ったものでも必要であると感じる人もいると思います。ふだんの生活でも、必要なものとそうでないものが人それぞれ違うように、非常時も同様ということです。
そうですよね。私と夫でも必要な物って違いそうですし。
そういうことです。年齢、性別、住んでいる場所、健康状態、みんな違いますから。
私は非常用袋は、1人1個用意するべきだと考えています。高齢者も子どもも含め、自分が自分に必要なものを用意します。おすすめなのは両手が空くリュックで、背負って最低1時間は歩けることを目安に考えてもらいたいです。
なるほど。では編集部のみんなも、それぞれ考えてみましょう。
今回はその中から、坂田さんの非常用持ち出し袋について、長柴さんにチェックしていただきます!
いきなりダメだし連発!My非常用持ち出し袋
では、さっそく考えてみてください。想定は震度6強の地震が起こったときです。避難して、ひと晩を過ごすことを前提に考えてみてください。
なるほど…。では、やってみます。
ちょっとすべて撮影できていないのですが、ものとしては衛生関連、食品関連、ラジオ、懐中電灯など全部で17種類くらいを想定してみました。
おぉ…これは、かなりの量ですね。まず、これらを選んだ理由を教えてもらえますか?
はい。我が家は今、夫と私、夫の両親と住んでいます。義父は少し身体が不自由で介護生活なので、避難がそもそもできないと思うんです…。私たちが避難といっても、家から数十秒でいけるガレージに置いている車くらいだと思うんですね。
車はハイエースなんですけど、幸い今、車中泊仕様に改造中でして。そこに持ち込むものとして考えました。
①~④は、コロナ禍ということもあり感染症対策です。
⑤のモバイルバッテリーは一番に思い浮かべました。
⑥~⑧は一般的にイメージできるもの
⑨~⑪はトイレ関連。トイレットペーパーを一巻用意しておけば、何かと使えそうかなと。
⑫⑬は飲料水と食品、自分がひと晩過ごすことを考えると、⑭~⑰もあるといいかなぁ。
う~ん、これそもそも「非常用持ち出し袋」の中身じゃないですね。
え? と言いますと?
坂田さん、この荷物全部リュックに入れて持てると思いますか?
そもそも避難は難しいかなと思っているので、半分くらいは車に積んでおく想定でした(汗)。確かに、リュックには入りきらないかも…。
避難は難しいから…という考えはまず置いておきましょう。自分の命を守るために「避難しなくてはいけない」という状況は起こりうるんです。坂田さんの場合、お義父様のことなど考えるべきことはいろいろありますが、ご自分が持ち出す「非常用持ち出し袋」として、今回は考えていただきたかったんです。
なるほど…。非常用持ち出し袋という想定は聞いていたにもかかわらず、いざイメージしてとなると、「私は避難できないな。できても車の中だな」って感じて考えてしまいました!
そうですよね。これだとリアカーで運ぶくらいの荷物の量だと思います。改めて「非常用持ち出し袋」として考えてみてください。
My非常用持ち出し袋、作ってみよう!
では、非常用持ち出し袋の中身を考える際のポイントを再度まとめてみますね。
非常持ち出し袋 ポイント
・両手が使えるリュック型がよい
・1人1個
・所有者はだれか
・重さ(背負って最低1時間は歩ける)
・体力(1人歩行可能、補助必要、筋力)
1人1個、自分の荷物は責任をもって用意する必要があるということですね。では私も「自分のための非常用持ち出し袋」という観点から、再度考えてみたいと思います。
他の人もそうでうすね。私も実際にリュックも用意して、詰めてみたいと思います。
はい、それはとてもよいと思います。
非常用持ち出し袋の「万人に共通する正解」はないんですよ。だから、どれだけリアルに必要なものをイメージし準備するかが大切です。
これだけ頻繁に災害は各地で起こっていますから、みんな作っておくべきですね。
そのとおりです。
みなさんもご存じのとおり、地震が起こると津波になる可能性も高いですよね。それ以外にも台風や正式名称ではありませんがゲリラ豪雨も毎年のように起こっています。地球温暖化の影響で海の水温がどんどんあがってきているので、毎年巨大化して必ず発生するといわれていますからね。
あと気になっているのは南海トラフ地震です。
30年以内に起こるなどといわれていますね。
その30年以内って、いつからいわれているか知っていますか? 2014年頃に言われ始めたんです。だからすでに7年たっているんですよ。カウントダウンしたらあと23年以内です。これも、ぜひ頭に入れておいていただきたいですね。
災害って、つい「うちは大丈夫な気がする…」と思いがちですが、備えあれば憂いなしです。みなさんもぜひこの機会に「My非常用持ち出し袋」について考えていただければと思います。
今どきの非常食の準備の仕方も考えてみました!
※この記事の内容は、2021年5月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。