15年目の改良!キーボックスのお困りごとの解決に向けて行った、たった1つのこととは?
20
2022
Sep
キーボックスとは、ボックス付き南京錠に「カギ」を入れることで、人を介さずにカギの受け渡しができるというもの。カギをシェアするという考え方から生まれたもので、自宅で介護サービスを受けている方や、民泊でのカギの受け渡しなどで、近年人気の商品です。
和気産業で、このキーボックスの販売をスタートしたのは2007年。お客様にも好評で、15年にわたり多くの方にご利用いただいています。しかしその人気の陰で、密かに問題になっていたことがあります。それは「購入者からの問い合わせが多い商品である」ということ。何と1週間に平均5件くらいの問い合わせがきていたのです。
電話で解決することも多いのですが、わざわざお問い合わせをいただくということ自体、何か問題があるはず。そして、発売から15年たった今、ようやくある1つのこと「パッケージを変える」という改良を行いました!
「え、改良したのはパッケージだけ? 商品に問題があったんじゃないの?」と思われた、そこのあなた。今回は、その疑問を解決するべく、キーボックスの問題点含め、その一部始終をセキララにご説明いたします。
INDEX
発売開始は2007年、当時はトラブル続き?
キーボックスは簡単に使える商品ではありますが、実は構造はちょっと複雑。発売当時は、まだ一般的な商品とはいえないこともあり、お客様には使い方がわかりづらい商品でもあったようです。
それにも関わらず、和気産業のキーボックスのパッケージは、簡単な使い方が書いてあるだけのシンプルなものでした。
そこで3年後の2010年に行ったのが「取扱説明書を入れる」ことでした。まずは、当時のことをよく知る河田さんから、この取扱説明書について説明してもらいます。
そのときに入れた説明書がこちらです。両面印刷となっています。
なぜ両面印刷なんですか?
キーボックスにはLサイズとMサイズがあり、構造や使い方が少し異なるため、説明書の内容も違います。しかし、2種類作ってそれぞれの商品に入れるとなると、手作業となるため間違いを起こす可能性がある、また単純に紙のコストも増えると、当時は考えたのです。そこで両面印刷にし、入れ間違いがおきないようにと配慮したのですが、実はこれが大問題でして…。
どういった問題が起こったんでしょう?
購入した商品にかかわらず、「最初に見た面だけを読んでしまわれる」ということが起こったんです。つまり、Mサイズを購入されたのにLサイズの説明書を読む、Lサイズを購入されたのにMサイズの説明書を読むという…。
この取扱説明書の上には一応Mサイズ、Lサイズという記載はあるものの、写真が白黒なので、お客様は自分が購入したものと違うというのがわかりにくいですもんね。
そうなんですよ。さらにMサイズとLサイズには大きな違いあるんです。それが、暗証番号を設定する際のレバーの位置で、Lサイズは背面、Mサイズは本体の中にあるんです。それぞれゴムキャップを外す作業からスタートするのですが、Mサイズの商品を購入された方がLサイズの説明書をみていると「背面にゴムキャップなんかないぞ! レバーはどこだ?」と、困らせてしまうという…。
それは…問題ですね。お客さまに、大変なご迷惑をかけてしまいます(汗)。
そうなんです。特にご高齢のお客様からの問い合わせが多くて…。何とかしないとと思いつつ、なかなか手をつけられずにいました。
ところが2021年、私は部署異動により商品管理やお客様対応に携わることになったんです。それを機に「今しかない」と思い、ようやく取扱説明書の改訂に取り組むことにしたというわけです。
2022年、取扱説明書をパッケージとの一体型へチェンジ!
この問題を解決するには、MサイズにはMサイズの取扱説明書を、LサイズにはLサイズの取扱説明書を入れればすむのでは…と、単純に思っちゃったのですが…。
もちろん、それは大前提にあるのですが、取扱説明書そのものがわかりづらい、内容が不十分であるという問題もありました。さらに、キーボックスには他にもお客さまが困りやすい2つのことがありまして…。
それが、 以下の2つなんです。
- 暗証番号が変わってしまって、開かない!
- カギが中から出てこなくなった、閉じ込められてしまった!
暗証番号が変わってしまったというのは、以前いいものマガジンでも取り上げましたね。そのときはキーボックスではなく、アルミのカギでしたが。
3月〜4月は「カギが開きません」という問い合わせが急増!
そうそう。暗証番号が変わるというのは、ちょっとした設定ミスや、暗証番号忘れなんですよね。でも、それについても取扱説明書を工夫することで、少しでもわかりやすくしたいと思いました。
カギが中から出てこなくなったというのは、どういうことでしょうか?
特にMサイズのキーボックスなのですが、ボックス部分が小さめなので、入れたカギがひっかかって開かなくなるんです。カギについているキーホルダーがひっかかっていることもありますね。でも、これはひっかかっているだけなので、ボックスをギュッと押してカギのひっかかりがとれれば、ちゃんと開きます。お問い合わせいただいた方の8割くらいは、この方法で解決します。
その説明もわかりやすく記載できるといいなと思いましたので、プロダクトデザインを手がけてもらっているつむゴさんにお願いしたんです。
では、ここからはつむゴさんに、工夫した点などを聞いてみたいと思います!
あらゆる工夫を施した、新パッケージがこちら!
最初にした改善は、パッケージと取扱説明書を一体化したことです。MサイズにはMサイズの、LサイズにはLサイズのものを、裏面もめいっぱい使って、しっかりと記載しました。
こうすれば、「違う説明書を読んでしまう」という問題点は解決しますね。写真もすべて新たに撮影し、文章も工夫してくださったので、すごくわかりやすくなりましたね。
「暗証番号が変わってしまって、開かない」という点は、どう工夫されたのでしょうか?
使用上のご注意の中に「暗証番号が自然に変わったり、勝手に変わったりすることはありません」と記載しました。そのうえで「解錠番号(暗証番号)の変更」は写真を入れて、詳しく記載しました。暗証番号を忘れてしまうという人為的ミスも起こりやすいので、「必ず記録&保存」や、「解錠番号メモの記載場所」なども入れてみました。
確かに、これなら目につきます。では、「カギが中から出てこなくなった、閉じ込められてしまった」という点は、どのように対策されたのでしょうか?
ワンポイントアドバイスという枠を設け、記載しました。解決方法として「ボックスをギュッと押す」というのがありますが、この説明が難しいなと思いまして…。押すって人によって力の入れ方も違うだろうし、使用上の注意には「強い衝撃を与えないでください」と書かれています。
そこで「キーホルダーやキーの入れ過ぎにご注意ください。ボックス内でひっかかり、フタが開かない事があります。その場合両方の手のひらでボックスを持ち、力をこめて圧迫すると開くことがあります」と記載しました。
文言を工夫されたんですね。「両手のひらで挟んで圧迫する」というのは、力加減も調節できそうですし、わかりやすくなったと思います!
はい、ありがとうございます。あとはせっかくパッケージごと作り直すことになったので、時代に合わせて変えるべきところは変え、残すべきところは残すなど、みなさんと相談しながら工夫しました。
つむゴさんのおかげで、すごく良いものができました。ありがとうございました。
22年間、商品自体のリニューアルは一切なし!
今回お話を聞いていて、一番驚いたのは、キーボックス自体のリニューアルは一切なかったということです。商品自体は完成度の高いものだったということですよね?
そうなんですよね。「複雑な構造で高機能なのだけど、使いやすい」という商品を作り上げたのだと自負しています。ただ、取扱説明書がわかりづらいことで、お客さまには長い間ご迷惑をおかけしてしまいました…。
今回、15年目のリニューアルを行ったことで、お客さまからのお問い合わせをどれだけ減らせるか…というのも、今後注視していきたいと思います。
お客さまのことを考えるというのは、「商品づくり」だけではない、「取扱説明書やパッケージづくり」も非常に大切だということを改めて感じました。
別の記事では「売り場作り」の大切さも伝えています。興味をお持ちいただきましたら、ぜひそちらの記事もご覧ください。
※この記事の内容は、2022年8月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。