営業にもつながる!商品開発で大切な考え方とは?
07
2022
Oct
大阪営業部営業1課の課長として、バリバリ活躍している安田さん。
営業会議で売上について話していたり、若手の商談の練習相手になっていたりする光景を見ていたので、営業のイメージしかなかったのですが、昔は企画部にいたそうなんです!
勝手に営業一筋だと思っていたのでびっくり。いわれてみれば、1年前からはじまった営業が新商品を考える「開発プロジェクト」も安田さんが主導でした。
はじめた理由を聞いてみると、企画部時代の経験や考え方が営業であっても大切だと感じたからだそう。その考え方について、詳しくお話を聞いてみました。
安田さん
入社後8年営業部に勤め、企画部に移動。9年間商品開発をした後、再び営業部に。
企画部時代は、記事に出てくる商品のほかに『シークレットボックス』『カチットワイヤー』『家具のスベリ材CAP』『ぬくもり手すりPIN+』、今は販売が終了したWAKIディズニーシリーズの『かぎ穴みっけ!』などを手掛けた。
INDEX
今でも売れている商品を多数開発!その考え方とは?
はじめに、安田さんが企画部のころに開発した商品を教えてください。
今もあるのは『切れまチェーン』『木部がすべるすべーる』『ワイドフェルトキャップスリム』とかかな。
どれもすぐ頭に思い浮かびます!安田さんが開発した商品だったなんて…!
商品を開発するときは、どのように考えているんですか?
お客様の声や自分の経験を参考にしています。統計データも大事ですが、平均をとってしまうと埋もれて見えなくなってしまうニーズもあると思うんです。だから、実際に聞いてみること・使ってみることを大切にしています。
たとえば『切れまチェーン』は、とあるホームセンターから「門扉の施錠に使っていたチェーンが切られてしまった。切れないチェーンはないの?」と相談を受けたことがきっかけで生まれた商品です。
当時、ホームセンターで販売されていたチェーンは切り売りが一般的で、市販のボルトクリッパーで切断できました。そのため、悪意がある人が切断する可能性があり、防犯目的で使うには不向きなものが多かったんです。
ホームセンター以外では、バイクの施錠用として防犯チェーンがあったものの、太くて重いので使い勝手が悪い。そこで切断に強く、細くて使い勝手のいいチェーンを開発しました。
切り売りされているということは、切れるということですもんね!
あれ?切れない『切れまチェーン』は、どうやって販売したんですか?
切り売りができなかったので、丁度良い長さを調査しました。相談を受けたホームセンターの担当の方に使ってもらったり、実際に門扉にかけてみたり。使い勝手がよくなった分、今まで需要が大きかった工事現場はもちろん、一般家庭でも使ってもらえる商品になると考えたので、家庭用の門扉や工具の管理も想定してテストしました。
結果、600mmと1200mmの2アイテムで販売を開始。今もシリーズで新商品が出ている人気の商品です。
お客様の声から、新しい需要を見つけられたのが『切れまチェーン』だったんですね。
ちなみに商品名も安田さんがつけたんですか?
はい。このネーミングだと関東では絶対に売れないといわれたりもしたんですが、お客様が一目見てわかるようなネーミングにしたくて。ふざけて付けたのではなく、超真面目に考えたんですけどね(笑)。
一度聞いたら忘れられない、いいネーミングだと思います!
他の商品についても教えてください。
木部用シリコン円滑滑走剤『木部がすべるすべーる』は、自分の経験をもとに開発しました。
既存の木部用潤滑スプレーを実際に使ってみたところ、周囲に液が飛び散ることとニオイが気になりました。だから、飛び散らなくてニオイのしないペンタイプを考えたんです。
既存品を実際に使い、気になったところを改良することで生まれた商品だったんですね。
結局、引き出しの奥の方に使う場合はペンだと難しいということで、ペンタイプだけじゃなく、スプレータイプも発売したんですけどね(笑)。
とはいえ、スプレータイプでも気になったところはしっかり改善しました。
そういう経緯があったんですね。どんなところを改善したのでしょうか?
既存のスプレーには、オイルを使用していて木部に使うとシミが残るという欠点や、乾きが遅く、滑りが良くなるまで時間がかかるのを、量が足りなかったと勘違いして何度もスプレーしてしまって、余計に飛び散るという欠点があったんです。
木部がすべるすべーるのスプレータイプはそんな欠点を改良すべく、シミになりにくい超高分子シリコンゴムを採用し、瞬時にすべり効果を発揮できる超速乾にこだわりました。もちろんニオイもしません。
ペンタイプだけで満足せず、広範囲に使いたいお客様向けにスプレータイプまでラインナップに加えたところに、お客様の声や自分の経験を大切にする安田さんの考えが活きていますね。
『ワイドフェルトキャップスリム』はどうやって生まれたんですか?
『ワイドフェルトキャップスリム』は正直、自分が欲しくて開発した商品です。当時、賃貸マンションに住んでいて、パイプ椅子を引きずる音がすごく気になっていました。でも脚が細いため、合うサイズのイス脚カバーがなくて。底面積も小さいからフェルトシートを貼り付けることも難しかったんです。
そこで思いついたのが、細いパイプ状の脚に合うイス脚カバー。自分と同じような悩みを抱えている人が他にもたくさんいると思ったので、頑張って商品化しました。
イス脚カバーについて気になる方はこちらもチェック!
なるほど。どの商品においても、実際に聞いてみたり、使ってみたりした経験をもとに開発していたのが、とてもよくわかりました。
営業に戻ってからも商品開発!面ファスナー売り場を改革!
『バリバリテープ』も安田さんが開発に関わったと聞いたのですが、2020年発売ということは、もう企画部から営業部に戻ってきていますよね。
実は『バリバリテープ』は営業部に戻ってから、企画部の林さんと協力して開発した商品なんです。
企画部を経験したことによって、売り場をお客様の視点で見る癖がついて、今ある売り場を当たり前だと思わない習慣がつきました。そんな中、気になったのが面ファスナーの売り場だったんです。
気になったというのはどういうことでしょうか?
もともと面ファスナーは世間で広く認知されているものです。だから、どの売場にも商品について補足するようなPOPはなく、パッケージも文字だけで、それ以上の説明がありませんでした。
売り場には、バンドタイプ・スタンダードタイプ・強力タイプと種類もいくつかありましたが、説明がないため、お客様が探しにきたときに自分の使いたい用途にどれが合うかわかりづらい状態でした。面ファスナー売り場をこのままにしておくと、これ以上の発展は見込めないと考え、商品開発に至りました。
たしかに元の売り場だと、何が違うのかがわかりづらくて、自分の用途に合わせて選ぶのが難しそうです。
そうなんです。そこで企画部と開発したのが『バリバリテープ』。
POPで強度や粘着力を☆で表したり、アイロン接着タイプや車内でも使える耐熱タイプ、壁面でも使うことができる凹凸に強いタイプなど新たにラインナップに加えたり、使用シーンの画像をパッケージに入れたり。お客様が面ファスナーを探しにきたとき、自分の使いたい用途に合うものを選びやすい売り場にしました。
色分けもされていて、用途もわかりやすくなりました!
見た目も変わりましたが、中身も変わりました。元の売り場では15㎝単位のテープと25mからの切り売りが多かったんですが、『バリバリテープ』には50㎝を導入しました。
というのも、切り売りでよく買われていたのが1mで、そんなに長いものは求められていないけれど、15㎝では足りないと考えているお客様がいると気がついたからなんです。実際、発売開始した50㎝は15㎝よりも人気でした。
お客様が選びやすい売り場で、使いやすい長さ。まさにお客様目線を大切にした商品開発だったんですね。
開発の経験を営業にも!「開発プロジェクト」はじめました
企画部を離れてもお客様目線を忘れずに、開発にも関わっていたということですが、営業においても、企画部のときに身につけた考え方は大切だったということでしょうか?
営業に慣れてしまうと、売上をあげることが目的になってしまって、商品部や企画部から与えられた商品やそのデータだけで、商談に行ってしまいがちです。そんなときに、その売り場でお客様が求めているものは何か、困っていることは何かを考えて提案できるといいですよね。
そういう考え方を身につけてもらうために、2021年から、営業が商品開発について考える「開発プロジェクト」をはじめました。
商品を販売するだけでなく、売り場に必要なものを自分で考えられる営業を目指すということですね。
そうです。商品開発をするとなると、調べれば出るデータも店頭まで行って自分の目で確認することや、妥協をしないことが肝心になってきます。例えば、家具屋に市場調査に行くとしたら、全国にあるチェーン店を何店舗か見て満足するのではなく、地域密着型のお店も見に行ってみることが発見につながります。
さらに、ただ見に行くのではなく、
・売り場の商品をみる
・売り場全体をみる
・売り場に買いに来たお客様をみる
・買いに来たお客様に用途を聞いてみる
ことが大切です。そうやって自分で情報を集めると、今まで見えなかったお客様のお困りごとが見えます。商談するときも、実際に自分の目で見た情報なので、自信をもって話すことができるようになります。
商品開発をすることは、営業にとってもいいことづくしなんですね。
当初営業部だけではじまった開発プロジェクトに、私や にピ が参加するようになったのも理由がありますか?
DIY業界はまだまだ男性の割合が多く、和気産業も営業には男性しかいません。でもホームセンターには女性もたくさん来店します。商品開発には女性の声も欠かせないということで、開発プロジェクトには女性にも参加してもらっています。
なるほど。よりお客様に近い目線になるため、多様な意見が必要ということですね。
開発プロジェクトは現状、アイデアが出てきては消えを繰り返している状態だと感じます。実際に商品開発をしていた安田さんが、当時アイデアを実現するために気をつけていたことを教えてください。
開発者目線(モノを作る側の目線)ではなく、お客様目線で売り場に立ってみることと、商品開発の目的(主軸)を決めたら、何が何でもその目的から逸れないようにすることです。
モノから商品を作ってしまうと、スペックや価格にこだわって売れるモノをと考えてしまがちです。そうではなく、自分が買いに来た立場だと思って売り場に立ってみて、お客様が何に困っているかを考えるんです。そこで見えてきた課題に対して、解決できる商品・求めている商品を作れば、自ずと売れていくものですから。
あとは、商品開発をしていると、上司から意見が飛んできて、自分の考えた目的と逸れてしまうような見直しを迫られることもあります。でも、それに合わせて変えてしまうのではなく、目的を果たせないなら開発をやめるくらいの覚悟で臨むことが大事だと思います。
最初に開発の目的をしっかりさせるということですね。
『バリバリテープ』を例にあげると、商品開発の目的は「お客様にとってわかりやすい売り場を作る」ことで、それを実現するためにパッケージや売り場に手を入れたということでしょうか。
その通りです。
極端にいえば、目的から逸れなければ、考えていた商品のアイデアがガラッと変わっても問題ないと思っています。実際、開発プロジェクトで壁面収納のアイデアだったのが、回を追うごとに今ある収納を改良するアイデアに変わっていたことがありましたよね(笑)。
目的がしっかりしていれば、今のアイデアが出てきては変わってという状態も悪くないと思うので、これからも頑張ってほしいですね。
モノからではなく、お客様のお困りごとから考えること。そして開発の目的を決めたらそれに向かって突き進むこと。そんな安田さんの指導を受けながら進んでいる開発プロジェクトから、ヒット商品が出る日もそう遠くないかもしれませんね!
営業も企画もメディアプロモーション室も!「お客様目線」を大切に!
安田さんのお話を聞いて、改めて開発プロジェクトの意味やお客様目線の大切さを感じました。
私たちメディアプロモーション室は、営業さんに比べて売り場や商品を見る機会が少ない分、お客様に近い目線です。今まではもっと商品に詳しくならなきゃと思っていましたが、逆にお客様に近い目線をいかして、新商品紹介や売り場提案、開発プロジェクトで価格やスペックではない気になるところをしっかり掘り下げていこうと思います。
マニアックの記事でも、読んでくださっている方が思わず「そこ気になってた!」と思ってしまうようなポイントを取り扱っていきます。
※この記事の内容は、2022年6月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。