床はキズつけたくないけど、敷物は掃除が面倒!開発者の困りごとから誕生した『キャスタースリッパ』【開発秘話】
06
2022
Dec
和気産業のイス脚カバーはあらゆるイス脚とお悩みに対応できるように、たくさんの形や材質があるため、種類が豊富です。
イス脚カバーが増えた理由はこちらをチェック!
そんな和気産業に、これまでのイス脚カバーとは、まったく異なった対象・形状の『キャスタースリッパ』が誕生しました。開発を担当したのは、昨年からイスゴム部門担当になった小山さん。さっそく、お話を聞いてみました。
INDEX
ほどよく滑る!『キャスタースリッパ』誕生のきっかけは自分の経験から
新商品の『キャスタースリッパ』は、オフィスチェアやゲーミングチェアのキャスターに装着して床を保護する、これまで世の中になかったタイプの商品ですよね。
そうです。実は『キャスタースリッパ』は、自分の経験から思いついた新商品なんです。
私は、自宅でキャスター付きのオフィスチェアを使っているのですが、クッションフロアのため、キャスターの下の床が凹んでしまうのが気になっていました。そこで、対策のために、塩化ビニル素材のチェアマットやタイルカーペットを使ってみました。
跡がつくのは改善されたのですが、どうしてもズレてしまったり、マットと床の隙間にホコリや湿気がたまって掃除が面倒。
いくつか試した結果、敷物を使わずに床をキズつけない方法はないものかと考えるようになりました。
私も自宅のゲーミングチェアはマットの上にのせているのですが、隙間の掃除が面倒でサボってます…。だから、敷物を使わずに対策したい気持ち、とてもわかります!
自分の困りごとからスタートすると、いつも以上に開発に身が入りそうですね。
そうですね。でも自分がほしいからという理由だけでは開発できないので、市場を調査してみました。
まず、オフィスチェアを使っている人がどれくらいいるかということ。調査の結果、コロナ禍の影響もあって、テレワークが増え、オフィスチェアの需要が大幅に増えていることがわかりました。
※出典:コクヨ株式会社『2020年「ECモールサイト売上前年比・販売ランキング」発表』
なるほど。仕事で長時間イスに座ることが増えて、腰に負担の少ないイスを求める人が増えたんですね。
そういうことです。
最近はオフィスチェアに限らず、ゲーミングチェアの需要も増えていますよね。
次に、キャスター付きのイスを自宅で使っている人は、敷物以外の方法でどのように床を保護しているかを調査しました。結果、キャスターが動くのを止める商品を使ったり、固定脚に付け替えたりしている人が一定数いることがわかりました。
キャスター脚で床にキズがつく原因として、車輪の接地面積が小さいことによる凹みと、 車輪が動くことによる擦りキズがあります。それを防ぐために、接地面積を増やしたうえで、固定する選択をしている人がいることに気がつきました。
敷物を使わない場合は、動かなくしてしまったほうが早いということなんでしょうか。
そうなんです。自宅でオフィスチェア・ゲーミングチェアを使用している人の大半が求めているのは、快適な座り心地であって、キャスターによってスイスイ動くことではないから。
イスに座るとき・立ち上がるとき以外に動く必要はないので、キャスターの動き自体を止めてしまうというのもわかります。でも、完全に止めてしまうと場所や姿勢の調節がしづらいし、掃除するときにも動かしづらいですよね。
それでも固定することを選んだのは、選択肢がそれしかなかったからだと思うんです。
もし、ダイニングチェアで床がキズつくのが気になったら、床にシートやマットを敷くという選択肢のほかに、脚にカバーやキャップを取り付ける方法があります。
でもオフィスチェアは、現状マットを敷く対策がほとんどで、他の方法が充実していません。
今キャスター脚を固定することで対策している人も、キズさえつかないようにできれば、少しは動かしたいと思うんです。だから、床にキズがつかなくて、ほどよく滑るキャスター用のイス脚カバーには需要があると確信しました。
お話を聞いてハッとしました。イス脚は歴史が長い分、床のキズを防止する方法がたくさんありますが、キャスター脚はオフィスの硬い床で使われることがほとんど。
だから、家庭のフローリングで生じるような床のキズを防止する対策はまだまだ少ないんですね。
世の中にないものを作るときの苦労は想像以上!
ほどよく滑って、床にキズがつかないキャスター用のイス脚カバーの需要に気がついて、開発がはじまった『キャスタースリッパ』。まったくの新商品ですが、開発はどのように進めたのですか?
まず、形を考えるところからはじめました。
というのも、キャスターはダイニングチェアなどのイス脚とは形も動きも全然違うため、これまでのイス脚カバーの形状や材質をベースにすることができなかったんです。
開発をはじめるまでは知らなかったのですが、キャスターは動かすときに数mm程度浮きます。だから、お皿のような形のカバーだと動かしたときに枠を乗り越えてしまうことがわかってきました。
チェアマットがズレるのが嫌で開発をはじめたのに、脱げてしまっては意味がありません。
そこで思いついたのが、足首にバンドがついているタイプのサンダルの形状です。歩くときに足が浮いても、バンドが足首にひっかかって脱げない、あの仕組みを採用しようと考えました。
なるほど。いわれてみればサンダルみたいな形状ですね。
そうです。それにこのバンド部分には、脱げにくい以外にもいくつかメリットがありました。
オフィスチェアのキャスターは直径が50~60mmのものが多いのですが、この伸縮するバンド部分のおかげで50mmにも60mm対応できるんです。それに全面が囲われていないので、着脱もしやすくなりました。
バンドをつけるというのは、すばらしい思いつきだったんですね!
形ができたら、次は何をするんですか?
設計図ができてからは、試作と微調整ですね。ここでもたくさんの壁がありました。
試作品ができて実際に使ってみてから、設計段階では気づかなかった負荷のかかる場所に気がついたり、フェルトの場所やサイズで悩んだり。
あと、開発の細かい話になるのですが、試作品の段階では国内で作ってもらって、量産するときは外国の工場で作るケースがあります。この場合は、同じ設計図で作ってもらっても、材料が変わるため、使用感が全然違うことがあるんです。
今回も試作品が固まってきてから、量産するための工場で作ってもらったら、とても柔らかくなってしまって…。使うとキャスターの双輪の間の溝が曲って、脱げてしまったんです。そこではじめて、硬さも大事な要素だと気がつきました。
形が決まってからも、そんなに壁があるんですね!
樹脂は特に難しいんです。一回のやり取りで決まることはないので、試してみて修正してを繰り返します。発売3カ月前ですが、今でもフェルトや硬さをギリギリまで調整中です。
てっきり設計図ができたら、あとはとんとん拍子で進むものだと思ってました。
段階を踏んで、何回も調整が必要なんですね。
パッケージにもこだわりを!みんなで作った新商品
試作や量産では苦労したという話でしたが、ネーミングはどうでしたか?
これは案外すんなり決まりました。サンダルみたいな形なので、キャスターサンダルが案の一つだったんですけど、サンダルは外用のイメージが強いということで、室内で使う履物、スリッパを採用しました。
『キャスタースリッパ』、ありそうでなかったシンプルな名前ですね。キャスターに履かせるイメージもしやすいです。
実際に履物を履かせる感じで、装着することができるので、我ながらぴったりだと思っています。この商品名は商標登録を出願中です。あとは、デザインに関する意匠登録も。
今までにない新商品だから、商標登録も意匠登録も大事ですね。
そういえば、パッケージもこれまでのイス脚カバーとは全然違う雰囲気ですよね。
実はこの特徴的な五角形は、デザイナーさんから提案いただいた形なんです。
キャスター付きのイスは5本脚であることが多く、『キャスタースリッパ』も5個入り。普通に箱に入れた場合、4本脚用イス脚カバーに比べてパッケージが大きくなってしまうため、ホームセンターで既に並んでいる商品の横に並べづらくなってしまうんです。それで悩んでいたらデザイナーさんが、五角形に組み合せて、五角形の箱にいれるとすっきり収まると考えてくれました。
すごいデザイナーさんですね!四角い4本脚用のイス脚カバーに対して、五角形は視覚的にも5本脚用だとわかりやすいです。
そうですよね。これまでに何度も商品パッケージを作ってくれたデザイナーさんなので、お互いに提案できるような、いい関係ができていたのがよかったのかもしれません。
私では到底思いつかなかったパッケージになったことで、商品開発は自分の力だけではないんだと改めて感じました。
いい商品を作るには、いい関係が大切なんですね。
このパッケージが売り場に並ぶ日が楽しみです!
どこに並んでいてもおかしくない、おしゃれなパッケージなので、イスゴム売り場はもちろん、インテリア売り場にも並ぶといいですよね。営業さんには、インテリア売り場への提案も頑張ってもらいたいです。
イス脚カバーがホームセンターのゴム売り場にあることは、あんまり知られていないですもんね。インテリア売り場にも並びますように!
新商品『キャスタースリッパ』2022年12月12日発売開始!
いよいよ発売開始!楽しみですね。
まったくの新商品なので、どのような反応がいただけるかドキドキします。
オフィスチェア・ゲーミングチェアはダイニングチェアに比べて、そもそもの重量が大きかったり、使用時の負荷のかかる場所が人によって違ったりと、難しいところがたくさんありました。全てのオフィスチェア・ゲーミングチェアに試せたわけではないので、使ってみて、気になるところがあれば教えていただけると嬉しいです。
和気産業は今までも、お客様の声や時代の流れに合わせて、商品をマイナーチェンジ・改良してきました。今回もそういういい流れができるといいですね。
ウォリスト突っぱりジャッキも、実はマイナーチェンジしてました!
そうですね。私と同じ悩みを抱えた、たくさんの人に使っていただきたいです。
『キャスタースリッパ』をどうぞよろしくお願いいたします。
お願いいたします!
※この記事の内容は、2022年9月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。