使いやすさにこだわった!桁数自由の『可変プッシュボタン錠』とは?【開発秘話】
17
2023
Aug
誰しも一度は使ったことがある南京錠。使われることが多い分、お悩みも多い商品なんです。
例えば「シリンダー錠のカギをなくしてしまって、あけられなくなった」「ダイヤル錠をあけるとき、指が他にあたって時間がかかった」など。
これらのお悩みを解消できるカギとして、誕生した新商品『可変プッシュボタン錠』。開発担当者の垣見さんにお話を聞いてみました。
INDEX
可変プッシュボタン錠開発のきっかけ
『可変プッシュボタン錠』を開発したきっかけを教えてください。
既存のカギのデメリットを解消する商品を作ろうと考えたんです。 シリンダー錠は解錠方法がわかりやすいメリットがありますが、カギをなくしてしまうと解錠できないデメリットがあります。ダイヤル錠は番号を変更できるものも多く、共有するのに適していますが、手が大きいとダイヤルを一列だけ回すのが難しかったり、意図せず番号を変更してしまったりすることも。
カギをなくしたことも、ダイヤルを上手く回せなかったこともあります…。
その点、プッシュボタン錠はカギをなくしてしまう心配もなく、解錠番号を位置で覚えられるため、暗がりや見えづらい場所でも手探りで解錠できるメリットがあります。でも、番号固定式がほとんど。
番号を変えられるようにして、もっとボタンを押しやすくすれば、新たなカギの選択肢として、お客様に喜ばれるのではないかと考えました。
プッシュボタン錠ってそんなに馴染みがなかったですが、メリットを聞くといいなと思いました。
そうですよね。
番号を変えられるプッシュボタン錠を作ろうと、自転車のカギのメーカーさんに相談したところ、メーカーさんも任意の番号に変更できる馬蹄錠(自転車の後輪についているカギ。馬のひづめを保護する蹄鉄のような形が特徴。)を作ろうとしていることが判明。
可変プッシュボタン錠を設計図から一緒に開発することになりました。
自転車のカギはプッシュボタン式も多いですもんね。強力なパートナーと一緒に作った『可変プッシュボタン錠』、ますます気になってきました。
桁数自由!?可変プッシュボタン錠の特長
『可変プッシュボタン錠』の特長を教えてください。
まずは、これまで市場にほとんど出回っていない可変式のプッシュボタン錠であることです。番号固定式のプッシュボタン錠は番号も桁数も製造時に決まってしまいますが、可変式は番号も桁数も自由。つまり、0桁から9桁まで設定することができるんです。
プッシュボタン錠は4桁のイメージがあったので、可変式も4桁だと思っていました! 9桁まで使えるなら、通り数の内容も多そうですね。
そこまで多くはないですが、全通りを試す総当たりはダイヤル錠に比べて難しいのではないでしょうか。
総当たりが難しいのはどうしてですか?
どの組み合わせを試したか覚えておくのが難しいからです。そのうえ、押して戻してという動作に時間がかかるため、防犯性は高いといえます。
なるほど。番号はどのように変えるのですか?
解錠すると、番号ボタンのフタをあけることができます。フタがあいた状態で、設定したい番号のボタンを時計回りに180度回転させて、押し込むことで変更できます。
番号ボタンを回すとは、すごい仕組みですね。
番号ボタンを回せる間隔をもうけることで、副次的に操作もしやすくなりました。
従来のプッシュボタン錠は間隔が狭いものが多く、押すときに隣のボタンにも触れてしまうことがありましたが、『可変プッシュボタン錠』は親指で押しても、隣のボタンに当たりづらい間隔になっています。
手の大きい男性も問題なく押せていました。押しやすいのはいいですね。
プッシュボタン錠は押したら、後ろから戻さなければいけない仕組みです。だから、戻しやすさも大切なんです。従来のプッシュボタン錠は押した番号が一つずつ飛び出て、それを押し戻す仕組みでしたが、『可変プッシュボタン錠』は、後ろが板になっているので、ワンプッシュで一気に戻すことができます。
単純だけどあるとないでは大きく違うポイントですね。
細かい内容はまだお伝えすることができませんが、自転車のカギメーカーさんと特許の共同申請もしています。
新規性がある、すごい構造なんですね。
そうなんです。いいカギができたので、ツルも3種類作成しました。通常の長さと、倉庫や門扉の施錠に使えるツル長タイプ・ワイヤータイプです。ワイヤーは60㎝あるので、様々な用途でご使用いただけます。
短いものだと、使える場所が限られてしまうので、ラインナップが充実していて嬉しいです。
使いやすいよう、細部までこだわりました
開発するにあたって、こだわったところを教えてください。
ダイヤル錠に関して、度々「番号が変わっていてあかない」というお問い合わせがあります。ダイヤル錠はツルを回して押し込むことで番号変更モードになるものが多く、触っているうちに意図せずその状態にしてしまうことで、起こるトラブルです。
『可変プッシュボタン錠』は、意図せず番号を変えてしまうことがないよう、正しい変更の操作をしないとフタが閉まらない仕組みになっています。例えば、180度回していないのに押しているボタンや、180度回したのに押していないボタンがあると閉まりません。
触っていて、無意識にフタを開けてしまうことがあっても、正しい操作をしなければ閉まらないのであれば安心です。でも、変更中にどこまで操作したかを忘れてしまうことはありそう…。
回したら押すことを心がけていただくとよいと思います。それでも、どれを回したかわからなくなってしまったら、一度全て反時計回りに180度回していただくと初期設定の0桁に戻ります。
あとは、解錠できなくなる事例として「設定番号を忘れた」もありますが、これに関しても、フタが閉まったときの番号を写真に撮る・メモすることで対策できます。
なるほど。設定したら、写真を撮る習慣をつけておきます!
試作と比べると、色が違うのも気になりますが、これはなぜですか?
試作段階では鏡面仕上げでした。鏡面はキレイではありますが、触る度に指紋がついてしまうのが気になるので、マットに仕上げてもらうようお願いしました。
指紋、気になりますもんね。こういうマットな質感のカギ、なかなか見ないのでお気に入りです。
よかったです。試作段階からの変更だと、フタも改良しました。
元の構造だとフタを閉めるときに解錠ボタンを押す必要がありました。フタを開けるときに、解錠ボタンを押すのは変更の動作として自然にできるのですが、変更ができたあと、フタを閉めるときは押すのを忘れる人が多いのではないかと考えたんです。
たしかに、設定が終わった後、無意識にフタを閉めようとしていました。
そうなんです。世の中には開けるときは押すけれど、閉めるときは押さなくてもいいボタンも多いので、意識しないと押すことが難しいんです。だから、押さなくても閉められるよう、傾斜をつけてもらいました。もし、ここで妥協していたら、フタが閉まらないときの理由として、変更の操作が間違っているから・解錠ボタンを押していないからの2つの可能性ができてしまって、確認する手間が増えてしまうところでした。
細かいところですが、使いやすさには欠かせないポイントです。
なぜ閉まらないのかが明確であることはとても大切ですね。困る人も減りそうです。
他にも操作感に関して、ボタンやリセット板の固さにもこだわりました。
柔らかすぎると、押せているか押せていないかわかりづらく、固すぎるとストレスになるので、絶妙な押しごたえになっています。
押し心地、めちゃくちゃいいですよね。使わないときも、思わず押してしまうくらいです。
丁度いいみたいでよかったです。
あとは、手探りで解錠できるのもメリットなので、リセット板にもくぼみをつけました。くぼみがあることで、裏側を見なくても番号をリセットできます。
なるほど!なんのマークだろうと思っていたのですが、そういう意図だったんですね。
リセット板の構造上、端を押してしまうと全ての番号が戻らない可能性があるので、中心を押したくなるようにという意味合いもあります。
細かいけれど、大事なこだわりがたくさん詰まっていることがわかりました。
工場をもたない和気産業の商品開発
工場をもたない和気産業は、協力してくださるメーカーさんがいることで商品開発ができています。技術があるメーカーさんと、お客様の目線に近い和気産業が一緒に考えることで、より使いやすい良い商品ができると考えています。
これからも、メーカーさんならではのアイデアと和気産業らしいお客様目線で商品を開発していきます。
※この記事の内容は、2023年5月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。