足かけ12年、お客さまとの二人三脚でEC事業部が開発した「猫の脱走防止扉」
04
2024
Apr
猫の脱走防止のための柵や扉づくりに、「メッシュパネル」を活用する方が多いことをご存じでしょうか?
「メッシュパネル」の本来の用途は壁かけや仕切りですが、それとは違う用途で注目を浴びたのは、実はお客さまの声がきっかけでした。最初は窓などに設置する柵からはじまり、現在は扉としての活用が増えています。
和気産業では柵の販売を2010年からスタートしましたが、扉の販売は長年かないませんでした。2022年、ようやく扉の販売が実現するも、それを叶えたのは開発素人のEC事業部だったのです。
今回は、その真相について、詳しくお話しします。
INDEX
スタートは、お客さまのアイデアから生まれた猫脱走防止柵
わが家は動物を飼っていないので知らなかったのですが、メッシュパネルが飼い主さんたちの間で活用されているそうですね。一体、どういった経緯なのでしょうか?
和気産業が、一般のお客さまにメッシュパネルの販売を始めたのは2005年です。初のインターネット通販事業「e-classy(イークラッシー)」を開設し、メッシュパネルとイスゴムを販売しました。
メッシュパネルはもともと、壁かけや仕切りとして使用するものですよね?
はい、その通りです。DIYの面白さのひとつに、「使う人のアイデアで何通りにも使える」というのがあります。「猫の脱走防止柵」として活用するというアイデアも、まさにそれでした。
まだブログが今ほどメジャーではなかった2007年、あるお客さまのブログ投稿により、メッシュパネルの新たな使い道として「猫の脱走防止柵」が脚光を浴びたんです。
なるほど。
窓から猫が脱走するのを防ぎたいという飼い主さんから注目を浴び、猫雑誌などでも取り上げられました。和気産業EC事業部への問い合わせも増えていったんですよね?
はい。私がEC事業部に配属されたのは2012年なので、聞いた話ですが。ただ、既製のメッシュパネルではサイズが合わない、うまく取り付けられないなどの問題もあり、モニターを募集して「猫脱走防止用メッシュパネルの開発」にのりだしたそうです。
和気産業のYouTubeでも活躍している岩本さんが、誰でも簡単に取り付けられるセミオーダー品などを企画し、現在も「猫の転落・脱走防止メッシュパネルセット」は、人気の商品となっています。
岩本さんはこんな人
柵だけでなく扉がほしい!猫の飼い主さんからの要望の声が届くも…
猫の脱走防止用柵の販売をはじめると、今度はお客さまから「脱走防止扉もほしい」との声がEC事業部に届くようになりました。
猫がキッチンに入るのを防ぎたい、玄関から脱走するのを防ぎたいなど、人は通れるが猫は通れない扉の需要があることがわかったんです。
そういえば、猫を飼っているお宅で扉をつけているのを見かけたことがあります。
人は通れるけど猫が通れない扉で、風通しをよくしたいとか圧迫感がないものがよいということで、メッシュパネルが注目されたんですよね?
はい、そうなんです。EC事業部でも「猫脱走防止柵セット」のときのように、「猫脱走防止扉セット」を販売できないか、検討したんです。
でも、アイデアは浮かぶものの、メシュパネルを扉として取り付けるにはどうしても専用金具が必要になるんですよね。企画部に相談しましたが、試作品を作るにも、まずは金型が必要。コスト面の問題からなかなか進まなかったんです。
他社では販売されていないのですか?
あります。でも、結構値が張るものが多くて…。メッシュパネルで扉を作りたいという方はコストのことも考えてのことだと思うんですよね。だから、できれば1~2万円程度で販売できる商品を作れたらなぁと考えたんです。企画部で金型を作って…となると、やはり高額な商品になってしまうので、それは避けたかったんです。
確か、お客さまの家に行って、メッシュパネルを設置したこともありましたよね?
え?お客さまのところに行ったんですか?
そうなんですよ。そこは犬を飼っているお宅だったんですが、新しい犬を迎えるにあたって、スペースを分けたいとのことで。ご高齢の方なので、どんなパネルを買って取り付けたらいいのかわからないと、電話でご相談をいただきました。
大阪にお住まいの方だったので、「写真を撮ったりブログに掲載したりする」ことをOKいただいたうえで、設置させていただきました。
そのときのお客様の声がこちらです。
結構大がかりな間仕切りですね。この設置をしてあげるって…やっぱり和気産業さんのサービス精神って、すごいです!
このときは、扉のように開閉できるよう片側をマジックバンドで固定しました。でも、マジックバンドだと毎回取り外すのが面倒だという方もいらっしゃいます。
もっと手軽で、費用もおさえられた商品を作りたいという想いを、ずっと抱えていましたね。
金型がダメなら3Dプリンターで作ろう!EC事業部がみずから開発に乗り出す
それが2022年にようやく「猫のメッシュ扉」が商品化されたんですよね? コストの問題が解決したのですか?
いや、そうじゃないんです。コストの問題は、金型を作ろうとする限り解決しそうにありませんでした。企画部で何十万もする金型を作り、私が目指す価格で販売するには、全国のホームセンターや大手通販で販売できるだけの量を生産する見込みが立たなければ、コスト的にも実現不可能です。
でも、長年聞いてきたお客様の声にどうしても応えたくて、自社の通販で購入される限られた方を対象に、金型なしで作れる方法を模索したんです。
大田さん、ずっとEC事業部なんですよね?開発の仕事をしたことはあったんですか?
いえ、ありません(笑)。だから、最初は知り合いのメーカーさんに相談しました。自社がダメでも、商品化できるアイデアをもつ企業さんがいるんじゃないかと思って。でも、やっぱりダメでした。
そこで諦めなかったのが、大田さんのすごいところですね。
企画部も、メーカーさんもダメ。それなら自分で作ってやれと。2021年、趣味で使っていた約2万円の3Dプリンターを使って試作を始めることにしました。
なるほど、3Dプリンターですか!
3Dプリンターを扱うのも、いちからだったんですよね?
実はそうなんです(笑)。YouTubeを参考にしました。ただ、10年以上考え続けていて、メーカーさんと交渉もしていたので、「どんなものを作ればよいか」のイメージはできていたんですよね。
じゃあ、結構サクサク作れたんですか?
いやいや、3Dプリンターの扱いについては悪戦苦闘しましたよ。使ってみて初めてわかることも多かったので。失敗作も、山のようにできてしまいました。
商品化する前には、モニターの募集もしていましたよね?
EC事業部には、猫を飼っている人がいなかったので、2022年2月にモニター募集しました。
そうしたら20名の方から応募をいただきまして。「待ってくれている方がいるんだ」と気持ちが引き締まりました。
それから約半年後の9月にようやく販売がスタートしたんですよね。反響はどうですか?
販売開始から約1年半ですが、現在30以上のご家庭で活用いただいています。もちろん3Dプリンターで作っていることをご承知いただいたうえです。実際にご使用いただくことでわかった不具合を修正したり、お客さまから「ここが割れてしまったので、部品がほしい」といわれれば改善してお渡ししたりといった対応をしています。
現在もお客さまと二人三脚で改良を続ける大田。新製品開発への意欲も!?
3Dプリンターを使うことも、お客さま一人ひとりの声に対応するのも、一企業でなかなかできることじゃないですよね。和気産業さん、やっぱりすごいですね。
そんなふうに考えたことはなかったですね(笑)。
はい。3Dプリンターで作るといっても、誰にも反対されませんでした(笑)。
「お客さまが喜ぶことなら何でもやろう」「とにかくやってみよう」というチャレンジ精神が根づく、和気産業さんならではですね。
大田さんは長年の夢が叶って、ようやく「猫のメッシュ扉プロジェクト」も一段落といった感じですか?
それがですね。メッシュパネルを使用しているため、活発な猫ちゃんはメッシュ部分を使って扉を乗り越えてしまうというご相談もきているんですよ。だから、それも何とかしたいと思っています。
頼もしいですね。EC事業部は、お客さまの声を反映し、よりよいインターネット通販サイトを運営しようと奮闘しています。ぜひ、これからも応援してください。
はい。どうぞお気軽にお電話いただければと思います!
※この記事の内容は、2024年3月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。