防災グッズを見直そう!能登半島地震のとき、必要になったのは防寒グッズと携帯トイレ
31
2024
May
災害時、被災者の生活を支えるための柱となることもあるホームセンターや総合スーパー。和気産業はそんなホームセンターや総合スーパーに商品を卸しているDIY用品の専門商社です。自社でも防災商品を開発していますが、メーカーさんの商品も数多く取り扱っています。
中でも、阪神淡路大震災をきっかけに取引をはじめた旭電機化成は、防災用品を多数生産しているため、震災が起こるたびに協力して商品を供給してきました。
災害といっても、風水害、火災など被害状況はさまざまで、その被害に応じて必要とされるものは異なります。今回は2024年1月に起きた能登半島地震発生から現在に至るまで、どのような防災商品が必要とされてきたかを、旭電機化成株式会社の原壯太取締役(以下、原さん)にお伺いしました。
INDEX
冬季の地震で必要になる防寒グッズ!アルミブランケットの選び方
能登半島地震発生後、どのような商品が必要とされましたか?
どのような災害でも、まず携帯トイレは必要とされます。停電や断水で水洗トイレを使えなくなることが多いからです。能登半島地震は、寒さの厳しい地域と時期だったこともあって、アルミブランケットなどの防寒グッズも必要とされました。
非常用持ち出し袋を作ったのが夏で、防寒グッズを入れていなかったので、ハッとしました。電気ストーブやエアコンが欠かせない地域では、防寒グッズがないと厳しいですね。
避難所によっては、ストーブや毛布も備蓄されていますが、数やあたたかさが十分とは限りません。在宅避難や車内での避難を検討している場合でも、電気が使えなくなることが考えられるので、低体温症のリスクを減らすためにも防寒グッズは備えておく必要があると思います。
なるほど。かさばらないので、時期に関係なく非常用持ち出し袋には入れておいたほうがよさそうですね。
こんなに薄いのに羽織るとあたたかいのはなぜですか?
アルミの空気を通さない性質を利用しているからです。身体から放出される熱を逃がさないため、保温性があります。羽織る他、窓に吊るして冷気を遮断する用途でも使えます。
なるほど。窓に使う場合も熱が逃げないからあたたかいんですね。
アルミブランケットにはいくつか種類があるようですが、何が違うのですか?
リバーシブルアルミブランケット
一方が金、もう一方が銀の「リバーシブルアルミブランケット」から紹介します。
元々、登山で使われていたアルミブランケットで、面によって効果が違うのが特徴です。
金色面を表にすると太陽光などの熱を吸収して、内側の銀色面で逃がさないため、寒さ対策に効果的です。銀色面を表にすると直射日光を反射するので、炎天下でも比較的涼しくなります。能登半島地震後は、特にこの商品の需要がありました。
なぜ金色なんだろうと思っていましたが、吸熱効果があるんですね。知りませんでした。
太陽が出ている時間帯で、寒いときは金色面を、暑いときは銀色面を表にする使い分けができるのは便利です。
金色がキラキラと目立つので、遭難時に発見してもらいやすくなる利点もあります。
アルミブランケット
続いて「アルミブランケット」です。両面銀で太陽光も反射してしまうため、吸熱効果は見込めませんが、夜間の寒さ対策や夏場の暑さ対策としては問題なく使えます。
一番よく見るアルミブランケットですね。
静音アルミブランケット
アルミ素材は動くたびにカサカサ音がするので、避難所での生活で睡眠の妨げになってしまうこともあります。それを解決したのが「静音アルミブランケット」です。こちらも見つけてもらいやすいようにエマージェンシーカラーとなっています。
触ってみると音の違いがわかります。避難所での生活を想定すると、静音は重要ですね。
それぞれあたたかさに違いはあるんですか?
アルミブランケットのあたたかさは厚さと材質によって違います。
基本の「アルミブランケット」は、PE通気フィルムとPETの生地にアルミを蒸着させています。「リバーシブルアルミブランケット」は、アルミをダブルコーティングしているため、「アルミブランケット」に比べて保温性能が43%高いです。「静音ブランケット」はアルミ層の上に厚手の静音フィルムを重ねていて、層の厚みが増している分、保温性能が30%アップしています。
厚みやアルミ層のコーティング回数によってあたたかさは大きく違うんですね。
熱を逃がさないからあたたかいということは、アルミブランケットを何重にも羽織ることでよりあたたかくなるのでしょうか?
そうですね。空気の層が増えるので、重ね着すると暖かくなります。
毛布などと併用すると、空気の層がよりしっかり形成されるので、おすすめです。
なるほど。窓に吊るすなど、用途がいくつかあるので、複数用意しておくといいかもしれませんね。
底冷え対策として、厚みのあるアルミシートなどを備えておくのもおすすめです。
100円ショップなど、安価でも手に入るものですが、あたたかさや使う場所など用途に合わせて選ぶ必要がありますね。
編集部員で実際にあたたかさを体験した後、たたんでみました。しっかり折れば、元のパッケージに入るサイズまでコンパクトにできました。
断水時、停電時に欠かせない携帯トイレ
能登半島地震でもトイレの問題が大きく取り上げられていましたね。
能登半島地震では、およそ11万戸で断水。数カ月経った今でも復旧していない地域もあります。地震に限らず、断水が続いたり、排水管が故障したりするとトイレの問題は深刻になってきます。汚れても掃除することができず、不衛生な状態となってしまう。不衛生なトイレを使わないようにと水分摂取を控えると、血栓ができやすくなってしまうなど別の問題も浮上します。
電気や水がとまってしまっても、携帯トイレを便器にかぶせて使うことで、衛生状態を保つことができるので、十分な数備蓄しておくことが肝心です。
我慢するのもよくないんですね…。
携帯トイレは何回分備蓄しておくとよいのでしょうか。
内閣府が発表した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」によると、東日本大震災発生後、仮設トイレが3日以内に到着したのは全体の34%。つまり、大半の避難所では使用できるトイレが4日以上ない状態でした。仮設トイレが設置された後も、汲取車の台数が足りず、使用禁止になるケースもあります。こういった状態でも生理現象である排泄を止めることはできません。
人間は1日5~7回排泄をします。そのため、携帯トイレは家族の人数分に合わせて、最低3日、できれば7日分備蓄することを推奨しています。
3日間ということは、1人あたり最低でも15回分!
2,3個用意しておけばいいというものではないということですね。
2回分など少数入りの商品もありますが、たくさん備蓄しておく必要があるものなので、30回分をまとめたセットも総合スーパーと共同で開発しました。大容量にすることで1回あたりの単価もおさえられています。
30回分あれば、2人分の最低限必要な量がそろいますね。
凝固剤だけでなく、処理袋にも抗菌・消臭の効果があるんですか?
そうです。処理袋には消臭抗菌作用のある柿渋のエキスを使っています。凝固剤、処理袋ともに抗菌試験と消臭試験をクリアしているので、ダブルで使うことで菌の増殖をおさえたり、排泄物の臭いを抑えたりすることができます。もちろん凝固剤だけでも販売しているので、用途に合わせて選んでいただければと思います。
参考になります。トイレ自体が近くにないときも、ゴミ箱など大きめの箱状のものに汚物袋をかぶせて使うこともできそうですね。
汚物袋は大きいものを入れているので、柔軟に活用いただければと思います。
トイレ自体が破損してしまっている場合や、数が足りない場合に使える「組立式簡易トイレ」もあります。一般的なトイレと同じ幅の便座がついていて、耐荷重も150㎏なので、大人でも違和感なく使えます。
便座があると、子どもや高齢者も使いやすいですね。
段ボールが土台なので、体重をかけることに躊躇しましたが、大柄な先輩が乗っても問題ありませんでした。組み立ても簡単なので、1つあると安心です。
季節や地域に合わせて防災グッズを備えよう
防災グッズは、住んでいる地域で地震が起きたとき、何が必要になるかを考えて備蓄しなければいけません。寒さの厳しい地域であれば、アルミブランケットの他に寝袋や毛布、カイロ。夏場であれば、うちわや瞬間冷却パックなど。季節で考えるだけでも必要なものが異なってきます。
これさえあれば安心という正解はないので、災害の後だからではなく、平常時も頭の隅で「今災害が起きたら何が必要か」を考え続けて、いざというときに備えましょう。
いいものマガジンはこれからも防災に取り組む、改めて考えるきっかけとなる記事を作成していきます。
大事なのは考えること!災害の現場を知るプロにお話を聞いてみました
※この記事の内容は、2024年3月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。