DIYレポート
能登半島地震2日後から営業再開した「ロッキー」って、いったいどんなホームセンターなの?

能登半島地震2日後から営業再開した「ロッキー」って、いったいどんなホームセンターなの?

14

2024

Jun

「ロッキー」は1968年(昭和43年)に中能登町(旧鹿西町)で創業。現在は、能登の七尾市・羽咋市・志賀町・中能登町で6店舗のホームセンターやスーパーセンターを運営している企業です。

能登の七尾市・羽咋市・志賀町・中能登町で6店舗のホームセンターやスーパーセンターを運営する「ロッキー」

2024年1月1日、能登半島地震が発生し、「ロッキー」各店も大きな被害を受けました。そんな中、「ロッキー志賀の郷」スーパーセンターは、震度7の被害を受けたにも関わらず、何と同年1月3日13時40分に営業再開を果たしました。

一体、なぜそんなことが可能だったのか、桜井店長にリモートでお話を伺いました。

異例のスピード!震災2日後の1月3日に営業再開

鈴木さん
鈴木

本日はお忙しい中、お時間を作ってくださりありがとうございます。普段から社長をはじめとして、従業員さんもSNSでの発信をされているので、震災直後からどのような状況なのか、何をされているのかが離れた場所にいる私たちにも、タイムリーに伝わってきました。
4カ月が経ち、少しは落ち着いた面もあるのかなと思いますが、現状はいかがですか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

そうですね。3月1日からやっと通常営業に戻り、ようやく95%復旧(2024年4月23日時点)したなと感じています。一部陳列棚が壊れたままであったり、店の前の段差が残ったままであったりするので、それが残り5%です。

震災2日後の1月3日に営業再開したロッキー
鈴木さん
鈴木

陳列棚や段差が直っていない状態で95%。どれだけ甚大な被害だったのかということが、伝わってきます…。
SNSからは、従業員さんが被災されながらもお店の復興に全力を尽くしておられることも伝わってきました。桜井店長ご自身も被災されたのではないですか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

自宅は半壊状態でした。でも幸い家族はみんな無事だったんです。半壊とはいえ自宅で住み続けることはできそうで、今すぐ何かしなければ…という状況ではなかったので、とりあえず翌日にお店へ向かったんです。

鈴木さん
鈴木

え、翌日ですか?道路なども寸断されていたのではないでしょうか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

はい。車で向かいましたが、道路もすごい状態でしたね。いつもより倍以上の時間がかかりました。

想像はしていましたが、店内は商品が散乱し、天井がはがれ、床が亀裂するなど、とんでもない状況で…。当初予定していた3日の初売りはとても無理だと思いました。

震災後の店内は、商品が散乱し、天井がはがれ、床が亀裂。
鈴木さん
鈴木

当然だと思います。そのあと、どうされたのですか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

まずはパートさんも含めた約70人の従業員に電話で安否確認をしました。みなさん被災していたのですが、70%の方が出勤してくれるというのです。志賀の郷店はスーパーセンターとして食料品も販売しているんですよ。だから、地域のみなさん、うちが開いていないと困るだろうなと。食品売り場だけでも早急に営業したいと、スタッフ一丸となって作業しました。

鈴木さん
鈴木

困っている方々がいるのを実感されたのは、本当の意味での地域密着型のお店だからなのでしょうね。店長はじめ、スタッフさんも被災されているのに、そういう気持ちで行動されたということに、頭が下がります。

ロッキー 桜井店長
桜井さん

まぁ、気持ちだけで営業再開は難しかったかもしれませんが、幸い電気系統が無事だったんです。だから、当初予定していた開店時間には、間に合わなかったものの、1月3日13時40分頃、食品売り場のみ営業を再開することができました。

営業再開後の店舗の様子とお客様の反応

鈴木さん
鈴木

営業再開とはいえ、お客様は初日から来られたのですか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

車で来店してくださいました。道路もガタガタで大変だったはずです。

鈴木さん
鈴木

SNSやニュースで拝見しましたが、お客様からは「みんなの希望の光、開いているだけで助かる」「店の人も大変なはずなのにありがたい」との声が届いていましたね。

ロッキー 桜井店長
桜井さん

喜んでくださるからこそ、私たちもやりがいをもって復旧に尽力できたのだと思います。

まずは、すぐに必要なものを届けることから

鈴木さん
鈴木

そうですね。お客様の声って有り難いですよね。お店を再開したといっても、復旧との同時進行だったと思います。最初は、どんな状況でしたか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

まずは在庫の水やポリタンクなどをとにかく並べましたね。みなさんもニュースでご存じだと思いますが、今回の能登半島地震では、とにかく「水問題」が大きかったですから。

まずは在庫の水やポリタンクなどをとにかく並べた。
ロッキー 桜井店長
桜井さん

自分たちも被災しているから必要なものがわかるんですよ。だから、ブルーシートもポリタンクも4トン単位ですぐに発注をかけ、入荷が始まったのは約1週間後でした。「入荷したら、すぐなくなり、再注文」を繰り返しながら、必要なものの提供を続けましたね。

ポリタンクは、4トン単位ですぐに発注
鈴木さん
鈴木

なるほど。災害時には、必要なものを必要なところへ届けるというのが一番大事ですね。具体的に、最初の頃必要とされたものは何でしたか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

ブルーシート、ポリタンク、簡易トイレ、土嚢、水、カップ麺ですね。災害の備えの参考にしてください。

断水1カ月、近隣の協力と食品提供への執念

鈴木さん
鈴木

先ほど店長もおっしゃっていましたが、お店も断水していたんですよね?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

はい。蛇口をひねっても水が出ない状態が続いたので、雨どいの水をためてトイレに活用するなど、していました。でも、それでは限界があります。幸い、近隣の方が井戸水を提供してくださり、従業員が2日に1回汲みに行くことで対応していました。

鈴木さん
鈴木

お店ががんばっているから、近隣のお客様も助けてくださったんですね。こういうときに助け合えるのって、普段からの信頼関係があってからこそだと思います。

ロッキー 桜井店長
桜井さん

そうかもしれません。本当にありがたかったです。水が出ない中も、お客様に食事を届けるため、ペットボトルの水を使って魚をさばいたり、調理したり。お米を炊くことができないので、問屋さんから炊いたご飯を仕入れたりもしました。そうした対応で、何とか「すぐに食べられる食料品」を提供していました。

惣菜コーナーでは、すぐに食べられる食品を提供。
鈴木さん
鈴木

それもニュースで見ました。家での調理は限られているし、「調理できないから助かる」「洗い物をしなくてすむからありがたい」という声が多かったですね。

ロッキー 桜井店長
桜井さん

1カ月後、ようやくお客様トイレの一部が使えるようになったときは、ホッとしました。

お客様用トイレ使えます

大変な状況だからこそ、SNSでの発信を続ける

鈴木さん
鈴木

お話を聞けば聞くほど大変な状況の中で、以前から行っていたFacebook投稿を続けられたのは、どういった理由でしょう?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

普段使っていたチラシが出せないので、唯一の方法だったんですよ。営業時間のお知らせやポリタンク入荷のお知らせ、お店の復旧状況など、なるべく伝わるようにと思っていました。

他には、「ロッキーwork」「ロッキー飯」など、見ていると元気になれるような投稿も意識しました。

ロッキー飯
鈴木さん
鈴木

そうですね。気持ちが明るくなる投稿をみると、元気がでますもんね。

ロッキー 桜井店長
桜井さん

地元には高齢者が多いので、どこまで届いていたのかはわかりませんが…。SNSをご覧になった方が、周りの方に口コミで伝えてくださるなど、相乗効果もあったのではと思います。

震災経験者だから話せる「震災前後の注意点」

鈴木さん
鈴木

回、震災を経験されて4カ月がたちました。今感じている率直な気持ちをお聞かせいただけますか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

災害、特に地震はいつ起こるかわからない。防災の必要性を改めて感じましたね。日頃から「備蓄」と「家具転倒防止対策」は行っておくことをおすすめしたいです。

鈴木さん
鈴木

なるほど。備蓄はいいものマガジンでも取り上げてきましたが、家具転倒防止はまだでした。教えていただき、ありがとうございます。震災後に気をつけるべきことはありますか?

ロッキー 桜井店長
桜井さん

残念なことに、悪質な詐欺や盗難被害が増えるので、そこは本当に注意していただきたいです。玄関がしまらなくなるので、人の侵入が容易になってしまうんですね。作業着を着て昼間ウロウロして民家をチェックし、夜に盗みに入る…といった手口だそうです。

他にも、家の壁がこわれているのをみて、「ブルーシートをかけてあげようか」と声をかけられ、お願いしたら、1枚10万という高額を請求されたなど…。

鈴木さん
鈴木

本当に許せませんね!

ロッキー 桜井店長
桜井さん

なので、悪質詐欺の情報を聞いたら、お店のFacebookで投稿するようにしていました。また、詐欺を防ぐ方法の一つに「DIYでの修繕」があると思うので、お客様ご自身でできる補修のご相談にも、丁寧に対応することを心がけました。お店として、人としてできることは、今までもこれからも続けていきたいです。

鈴木さん
鈴木

お忙しい中、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

「ロッキー志賀の郷」店長のお話を聞いて

地域密着型のお店だからこそ、「地域の方のために」という思いの強さを感じました。
「本当に困ったときに助けてくれる」それは信頼に値することだと思います。「ロッキー」さんは、まさにそれを行動で示されたからこそ、地域の方に感謝され、より信頼を深められたことと思います。
企業理念で「お客様第一主義」を掲げるところは多いですが、それを間違いなく実践している「ロッキー」さんは、本当に素晴らしいなと思いました。

ご多忙の中のインタビューご協力にも、本当に感謝しています。この学びを私たちも役立てていきたいと思います。

※この記事の内容は、2024年4月23日の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。

2024.06.14
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