商品開発に欠かせないのはコミュニケーション!技術力だけじゃないセメダインの100年間
21
2024
Aug
2023年11月に創業100周年をむかえた接着剤メーカー、セメダイン株式会社。
問屋である和気産業との関係は長く、総合スーパーと取引をはじめた約40年前からお付き合いがあります。当時からヒット商品を世に生み出し、今なお進化し続けるセメダイン。
セメダインの100年の歩みとこれからについて、セメダイン株式会社ニューリテール営業部営業部長の栗山さんと、ニューリテール営業部営業グループ販売第六チーム(東京)チームリーダーの平井さんにお話をうかがいしました。
INDEX
ファンとの対話を大切にしているセメダイン
セメダインさんといえば、XやInstagramを活用して積極的に情報発信している印象があります。特にXは2010年と比較的早くから取り組んでいますが、はじめたきっかけは何だったのでしょうか?
SNSは広報部が運営しています。
はじめたきっかけは「商品を売るため」ではなく「ファンづくりのため」。テレビCMなども活用していましたが、どうしてもお客様と目線が異なってしまうため、愛を持って同じ目線で語り合えるツールを探していて、当時のTwitter(現X)をはじめるに至ったとのことです。
おかげさまでフォロワーもたくさん増えました。営業の私たちからすると、「たくさんのフォロワーに向けて、こういう情報を流してよ!」と思ってしまうのですが、広報部はファンでいてくれるだけでありがたい、ファンを利用してはいけないと考えているため、よく反対されます。大切なのは「愛を持ってくれる人たちとのコミュニケーション」といわれて、そうかと納得しました。
愛を持って同じ目線で語り合える仲間づくり!素敵な考えです。
誰もが一度は目にしたことがある、使ったことがある接着剤メーカーだからこそ、見えないファンがたくさんいたと思います。Xでファンが見えるようになって、同じ目線でコミュニケーションができるようになったんですね。
担当者はXがアップデートされるにつれて、販売促進ツールとしての側面が大きくなってきてしまって、フォロワー数やインプレッション数を気にせざるを得なくなってきてしまったことにジレンマを感じているようです。時代とともにSNSも変化しているということですね。
アルゴリズムが変わると、運用の仕方も変える必要がでてきて、難しいですよね…。
そんな中でもファンを大切にしたいという気持ちが伝わってきます。運用にあたって、気をつけているポイントを教えていただけますか?
セメダインの公式Xで気をつけているポイントは4つです。
1.人を出さない
接着剤やセメダインを身近な存在と感じてもらいたいと思い、それらに関係する内容を投稿しています。企業アカウントなので、個人的なことは投稿しておりません。
2.毎日更新
毎日セメダインという言葉を目にしていただけるように、日々投稿を考えています。
3.人の行動に合わせた投稿
朝はあいさつなど、朝昼晩の時間軸を意識して発信しています。
4.リプライは丁寧に
専門的なものは接着技術相談センターにおつなぎするようにしていますが、担当者が回答することもあります。
担当は基本1人なので、プレッシャーで胃がキリキリすることもあるようです。
現在Xを担当されている方は、入社時に前任者へファンレターを書いていたという投稿を拝見しました。愛を持ってくれる人とのコミュニケーションを大切にしているからこそ今があるんですね。
コミュニケーションを大切にしていたのは昔から
先ほど、接着技術相談センターのお話が出てきましたが、接着技術相談センターとは何ですか?
セメダインの総合サイトでは使い方や接着可能な製品など、お問い合わせの多い内容をQ&A形式でご紹介しています。しかし、中にはQ&Aを見ただけでは解決できないお問い合わせもあります。そういったお問い合わせに対応すべく、電話で相談を受ける接着技術相談センターを設けています。商品パッケージの裏にも記載しています。
なるほど。どんな相談が入るんですか?
セメダインには家庭用だけでなく、工業用の接着剤もあります。工業用の場合、法律や規制などの付帯条件が多く、数ある接着剤の中から適切なものを選ぶのが難しいため、そういった技術者からお問い合わせが入ることが多いです。
昔は技術者や研究者向けに商品を紹介するセメダインレビューという雑誌を発行していたんです。それが接着技術相談センターという形で残ったという感じですね。
1969年の雑誌…!昔から技術者とのコミュニケーションがあったんですね。
技術者のお困りごとをもとに新しい商品を開発することもあるので、接着技術相談センターに入ったお問い合わせは社内でも共有されています。
気軽に相談できるSNSと、専門的な質問も受け付ける接着技術相談センターがあることで、一般ユーザーと技術者の両方とコミュニケーションができているんですね。
和気産業との共同開発!コミュニケーションから生まれた商品
和気産業の歴史をさかのぼると、セメダインさんとの共同開発の話が出てくることがあります。昔から共同開発をしていたんですね。
弊社にもチラシが残っています。初めての共同開発商品は1980年に発売された「セメダインホワイトS」。ボトルを逆さにすることで、それまでの木工用接着剤の「使いにくさ」「不経済」を改善し、最初から最後まで気持ちよく使えるようにした画期的な商品です。逆さボトルは「包装用逆さ容器」として実用新案にも登録しました。
今でもセメダインさんの木工用接着剤は逆さボトルですよね。ロングセラー商品が共同開発から生まれたのは誇らしいです。今見てもインパクトのある「さかさだから」の広告は当時話題になったと記録に残っています。
オール金物見本市で大阪商工会議所会頭ショウ、’82パーケジング展でも文具・家庭用品部門で入賞したようですね。
まさに画期的な商品だったんですね。
他にも、社内に現物が残っていて気になる商品があります。「ランナー」という商品なんですけど…。
「ランナー」は1985年に発売した商品です。
チラシに「いま最もナウイ」と書いてある通り、当時バスケットシューズが流行ったんです。中身はのりや木工用接着剤と特別なものではないので、完全にパッケージ勝負の商品ですね。
流行りも取り入れて、商品開発していたんですね。鉛筆立てや貯金箱として使いたいと思って当時購入した若者もいるのではないかと思います。
最近の共同開発商品についても教えていただけますか?
最近共同開発した商品には、2017年発売の「モール素材用接着剤」があります。
これは当時私と飯島さん(当時 和気産業商品部次長)が居酒屋で、接着剤売り場ではなく、素材の売り場に専用接着剤があったほうがお客様にとって選びやすいのではないかと話したことがきっかけで生まれた商品です。
半年ほどとすごい早さで商品化したにしては、屋外で使えて、PP・PEにも対応している、とてもいい商品ですよね。
接着剤メーカーではよくある話なんですが、型番や商品名に開発者の要素が入っていることがあります。「モール素材用接着剤」の型番TI-002も飯島さんのイニシャルが由来なんです(笑)。
型番にも秘密があったなんて…!
飯島さんにも開発秘話を聞いてみました。万能型が増え、用途別の接着剤が減っている当時の状況でも、お客様は変わらず用途に応じたものを買いにくるため、ラインナップにギャップを感じていたそうです。「モール素材用接着剤」はそのことを栗山さんと相談した結果、誕生した商品だということですね。
これまでの関係性があったからこそ、迅速に商品化できた。商品開発においてもコミュニケーションが大切だということがわかりました。
これからもコミュニケーションを大切に
近年、DIY用品における流通が大きく変化しています。職人さんがホームセンターで接着剤を購入したり、技術者がネット通販で接着剤を購入したり、これまでとは違う動きが増えています。そのような変化に対応して、セメダインの事業領域も変わっています。
EVや地震対策、グローバル展開も進めていくセメダイン株式会社。役割が変わっても、大切なのはコミュニケーション。ともに下の世代につなげていきます。
おまけ
セメダイン100周年ノベルティ付きのスーパーXシリーズ、Amazonにて販売中!
購入すると、おまけでセメダインオリジナルデザインの絆創膏が付いてきます。
※この記事の内容は、2024年5月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。