水害対策に立ちあがった特殊吸収体のパイオニアに聞く!豪雨時に吸水土のうとして使える「水たまり吸水シート」とは?
26
2024
Aug
災害時の備えとして欠かせない防災用品。
頻発化する自然災害に対応するため、和気産業は防災用品の取り扱いを強化しています。
台風の発生が増加する時期に欠かせないのが水害対策です。
短時間強雨の発生件数は40年前の1.5倍(※)。台風の影響による雨だけでなく、線状降水帯やゲリラ豪雨も増加しており、水害のリスクが高まっています。
※国土交通省発行PDF:河川事業概要2023「気候変動の状況」
水害対策のニーズに応えるため、水害対策商品を取り扱う㐧一衛材と2023年から取引をはじめました。土のうに代わる選択肢、吸水土のうについて、㐧一衛材株式会社営業本部の髙田さんにお話をうかがいました。
INDEX
特殊吸収体のパイオニア、㐧一衛材とは?
㐧一衛材さんは特殊吸収体のパイオニアとのことですが、特殊吸収体とは何ですか?
特殊吸収体とは、くらしや産業の中から生じる不要な液体を吸収する素材のことを指します。大人用紙おむつや生理用ナプキン、介護用シーツ、ペットケア用品、食品の鮮度保持シートなど、さまざまな分野に幅広く用いられています。
㐧一衛材は1965年から50年以上、特殊吸収体の研究開発・生産を続けてきました。
身近なものにも使われている素材なんですね。
吸収というと、水をイメージされる方が多いと思いますが、海上での油流出事故を処理するための油吸着マットなど、水だけでなく油を吸収する商品もあります。国土交通省型式認定を受けているため、たくさんの船で備えていただいています。
国土交通省認定の商品を作れる会社ということですね!
特殊吸収体一筋で培ってきた技術力をいかした防災用品。気になります。
2017年から、突然の災害の備えとして「軽く扱いやすい・コンパクトで備蓄しやすい」をキーワードに防災用品のブランド「防災人」の販売をはじめました。
製造機の設計から改良までを自社で行っているため、お客様のニーズに対応できるのが強みです。
現場の悩みに寄り添って、水や油にまつわる問題を様々な角度から解消しているんですね。
水のうとして水害対策に使える吸水シート
防災用品としても注目されている「水たまり吸水シート」は、どのような目的で開発されたのですか?
「水たまり吸水シート」は、元々ダムやトンネル工事の水たまりを吸収するために開発した商品です。従来は大雨が降ったあと、溜まってしまった水を作業員の方がスポンジで吸って対応していました。その間は作業を進められないことが問題でした。そこで、作業効率を向上させるために誕生したのが吸収シートなんです。
水を吸わせる用途のほか、水害対策に使う吸水土のうとしての需要も増加しています。
元は工業用の商品なんですね。
そうです。工業用に作ったため、素早い吸水速度と70cmからの落下にも耐える耐久性、労働基準法を遵守した吸水量を兼ね備えています。スポーツの大会が開催されるグラウンドの水たまりを吸水する用途でも使われているんです。
野球などの試合で、直前に雨が降ると水たまりに向かってシートを投げているのを見かけます。あれは吸水シートだったんですね!
どれくらいの速度で水を吸うのか試してみます。
環境によるので、何分とはいえませんが、素早く吸水します。水を吸ったあとは、表面に残った水が少し落ちるくらいで、持ちあげても漏れてこないです。
シート状だったのが、水を吸うとずっしり重くなりました。
水で流されてしまわないよう、ある程度の重さがあります。吸水土のうとして、積み上げて使うのも有効です。
たしかに、流されてしまっては意味がないですもんね。
耐久性に自信ありとのことだったので、70cmの高さから落としてみました。
すごい音がしたので心配でしたが、破れていませんでした!
通常の吸水シートに比べて、内袋と外袋の二重構造なうえ、三方を縫製しているため、縦方向にも横方向にも強くなっています。
急いで作業しているときに破れてしまうと大変なので、耐久性は重要ですね。
労働基準法を遵守した吸水量というのは、どういうことでしょうか?
国は労働基準法で作業者の安全を守るための重量物の制限を設けています。
継続で作業する場合、満16歳以上18歳未満の男性は20kg、女性は15kgと定められているため、水たまり吸水シートBLOCK20は19L、BLOCK15は14Lの吸水量にしました。
継続で作業できる重さに合わせているのですね。水を吸う作業や吸水土のうの設置は繰り返し運ぶ必要があるので、大切なポイントですね。
こちらの「水たまり吸水シート」は何ですか?
雨漏りや水漏れ、浸水対策で気軽に使えるよう、家庭用の7Lも開発しました。
5枚入りでチャックシールがついているので、余っても保管いただけます。
家庭で使うなら、7Lくらいが大きさも重さも丁度よさそうです。
そうですね。
最近はバリアフリーで入口に差がないフラットな店舗が増えています。
そういった場合はゲリラ豪雨などの短時間強雨の際、店内まで水が流れ込む可能性が高いため、吸水量の多い「水たまり吸水シートBLOCK15」「水たまり吸水シートBLOCK20」を備えておくことをおすすめします。
土のうは土がないと設置できませんが、吸水土のうなら水を吸わせることで設置できます。水を吸わせる前は薄くコンパクトなので、バックヤードにも備えやすいです。
土がなくても、水なら準備できる地域も多そうです。
水を吸うと大きくなりますが、捨てるときはどうしたらいいですか?
水を吸収しているポリマーは紫外線に弱いため、数日間天日干ししていただくと元の厚みまで戻ります。早く乾かしたい場合は離水剤(塩化カルシウムなど)を使うか、グレーチングの上など設置面積が少ない状態で干すことで、水が抜けやすくなります。
脱水したあとは、地域の規則に従って廃棄していただけます。
干すだけで元の薄さに戻るんですね!
乾燥後のシートは再利用できますか?
残念ながら、再利用はできません。そのようなお問い合わせをいただくこともありますが、使って乾燥した後、再度水に浸してもポリマーが壊れているため、吸水しません。
また「水たまり吸水シート」は水専用で、海水や油等の吸収はできないので、ご注意ください。
浸水や水漏れなど、水関係の緊急時に使うものということですね。
土のうの場合は置きっぱなしにできるので、用途に合わせてご活用いただければと思います。
なるほど。土が近くにあって、ずっと置いておける状態なら土のうでもよいですが、土がなく、保管場所もない場合は吸水土のうがいいかもしれません。
浸水を防ぐための備えを!
増えている水害。避難をするための備えはしていても、家の浸水に対する備えは不十分という方も多いのではないでしょうか。
自治体が土のうステーションを設置して、土のうを配布していることもあるので、お住まいの地域の水害対策について一度調べてみてください。お近くに土のうステーションがない場合や運ぶ手段がない場合は、ハザードマップを確認したうえで吸水土のうの備蓄も考えてみましょう。
いいものマガジンは他にも防災の記事を作成しています。考えるきっかけになれば幸いです。
※この記事の内容は、2024年6月の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。