マニアックDIY
黒い反射テープ開発秘話

【開発秘話】昼間は目立たない「黒い反射テープ」ができるまで

05

2020

Mar

企画部でオリジナル商品の開発をしているコヤマです。

ここではいいものマガジンウェブ版の場所をちょっと間借りしまして、当社から販売されているオリジナル商品のこぼれ話を語らせていただきたいと思います。

今回は、昼間は目立たず夜反射する「黒い反射テープ」を思いついてからお披露目するまでのエピソードです。

オリジナル商品企画の初ミッションは「安全にまつわる商品」

2018年初めごろ営業を数年経験したのち企画の部署に異動となり、オリジナル商品の企画に携わることになりました。

小山さん
小山

私に与えられた担当ジャンルが「安全にまつわる商品」

経験も全くないものだから、右も左も分からず、いったい何を作ればいいのかしばらく頭を抱え、とりあえず会社から出荷された商品の実績をひたすらこねくり回して分析してみながら、試行錯誤する日々が続きました。

ある日、ぽっと目に付いたのが、 「反射」「蛍光」「蓄光」のジャンル。

一通りWAKIブランドパッケージでそろっているし「和気産業の中でもそこそこホットなカテゴリなのかも」ということで、反射材の世界にあるものでまだホームセンターで見かけないものは何か、しばらくネットショップを眺めていました。

そこで引っかかったのが「反射テープ 黒」。ほぉー、反射で黒い色ね…。

明るいところでは目立たないが暗くなって光が当たると反射して目立つ

「反射テープに黒い色なんてあるんだ~」っていうか黒いのに光るんだと地味に感動を覚えました。地味な色だけに…。

「そういえば、ホームセンターでテープの売り場を長いこと見てきたけれど、黒い色の反射テープなんて見たことないよな?」と思い関東一円片っ端からお店を探し回ってみましたが、意外とぜんぜん見つからなかったんですね。

「これはいけるかも…!」と徐々にテンションがこみ上がってきました。

業界では当たり前!?それを世に知らせるのも私たちの仕事

古くから反射テープのパッケージの手配や商品の袋詰めをしていただいている協力会社さまに聞いてみたところ、「ずっと前からやってるよ~」との返事がきてびっくり。

実はホームセンターで販売されている反射テープは、反射シートメーカーからみるとほんの一握りくらいの割合です。業界全体としては、主に道路標識、次にカラーコーンやバリケードなどの保安用品、建物の看板が圧倒的に使われる量が大きいのです。

黒の反射テープはもともと、看板製作会社や印刷会社から、「看板の文字を光らせる」といった使い方で10年以上前から需要があったそうです。昼間は黒い文字で、夜はライトが当たると白く光って目立つというような使い方です。

反射する前と反射時

「それをなぜいまさら?」という感じの反応だったものだから、業界では当たり前でも世間では知られていないものってたくさんあるんだな、と改めて実感しました。

ただ、新商品というのは思いついただけではまだ世間に出せる状態とは程遠く、「どの形、長さで、どんな謳い方で、いくらで商品にするのか」考えなくてはならないことが山ほどあり、最終的な形になるまでは、まだまだ時間がかかるのです…。

1つめの課題は「コスト」

反射テープといえば定番の色は「白・赤・黄」。普段生活していてよく目にするのもこの3色だと思います。看板や保安用品向けの市場もだいたいこの色が定番です。

しかし、黒い反射テープは普及しているタイプのものとは仕様が異なるようで、紫外線で劣化しにくい一つ上のグレードのものを使っていたのです。そこで、コストが一番の課題になってきました。

基本の色と比べると割高になってしまい、そのまま反射テープの黒色というだけの伝え方では、たぶん注目を浴びることはないだろうなと予想できます。

2つめの課題は「コンセプト」

「他の反射テープと比べコストは高いけれど、黒であることがこんなにいいものなんですよ!」と世間に理解されるような伝え方を考える必要がでてきました。

商品の良さはパッケージで大きく左右されるため、パッケージに載せる文面、写真、レイアウトなどを練らなくてはいけません。

商品開発とマーケティングが分かれている企業は多いのですが、当社の企画の部署はそんなに人手が多いわけではないので、基本的に発案からプロモーションまで担当者主導で面倒をみるスタイル。

さあ、どういうコンセプトにしようかと今まであった問い合わせや、ネットの書き込みなど拾い集めたところ、このような声を見つけました。

反射材に対する世間の声

・自転車やヘルメットに反射テープを貼りたいけれど、赤とか黄色は昼間に目立つのが嫌だ 

・貼ったもののデザインがダサくなる 

交通安全で反射材の使用が推奨されているけれど、使いたがらないのってここにも原因があるんじゃないかという仮説が立ち、「反射テープを使いたいけれど、昼間目立つのは嫌だ」という人のための商品というコンセプトで売り出そうという方向にしたんです。

結果、社内でのプレゼンテーションではおおむね好評、発売に向けて一歩前進することができました。

3つめの課題は「パッケージ」

あとはデザインなのですが、そこはDIYの商品を売る会社。文面やレイアウトは基本的にほとんど私の手で作成しました。

ちなみに東京在住の企画メンバーはデザイナーでもないのにイラストレーターを最低限いじれるだけの腕前はあったりします。

セルフリノベなら、基礎はプロにやってもらいますが、商品パッケージはその逆。仕上げはプロにお願いするけれど、コンセプトにかかわる部分は自分でデザインする。それが正解かどうかはそれぞれだとは思いますが、少なくとも当社は「居ないなら自分でやろう」という文字通りDo it yourselfな社風のせいなのか、結構ディスプレイとかPOPとか社員自身で作ってしまうことが多かったりします。

当社の場合、残念ながら会社の名前やブランドが強いわけではないので、「商品の特徴をそのまま名前にしちゃう」という作戦にしました。いろいろ考えたのですが、ここはもうド直球に『黒い反射テープ』

うん、なんの商品か一目でわかる! あと「反射テープ 黒い」などのキーワードで検索されやすくするという狙いもあります。

そしてコンセプトを、パッケージの目立つ部分に「昼間は目立たずデザイン壊さない」と15文字で納めました

そんなこんなで自分でラフを書いては、別の部署の人から意見を聞いて修正を繰り返し、できたのが今の形です。

この機会なので、ボツになったラフ案も一挙にお披露目したいと思います。我ながらスッキリした形に落ち着いたと思うのですが、いかがでしょうか?

デザインを考えていた時のラフ案
考えていたけどボツになったデザイン案

製品仕様も固まり、パッケージも固まり、納品のめども立ったのでいよいよ発売! はたして反応はいかに?

大舞台でインパクトを与えるために… 

「黒い反射テープ」発売のお披露目をしたのが2018年の8月。

ちょうど年に一度、ホームセンター業界が一堂に集まる見本市「JAPAN HOMECENTER DIYSHOW(通称DIYショー)」でお披露目することになりました!

うれしい大舞台ではありますが、「バイヤーの注目を集めるためにはどうしよう」と、ここでも長いこと悩みました。

当然ながら反射テープは夜暗い所でライトを当てないと光っている様子が伝わりません。幕張メッセを真っ暗にすることなんてできないし、大きい暗室をつくるスペースもない。

小山さん
小山

そこでとったのが「フラッシュ撮影をして光る様子を見る」という方法!

この方法、どこかで見たのを参考にした記憶があるのですが、ちょっと思い出せませんでした。通常見本市は撮影NGなところが多いのですが、当社はいろんな人に写真を撮って良ければSNSで拡散してほしいという方針で全面OK。せっかくだから、来てくれた方にアクションを起こしてもらい覚えて帰ってもらうことにしました。

あとは、どのようなものを置けば目を引くか、写真映えするのは何なのかをいろいろと洗い出しました。文字を光らせてみたり、自転車は実物置くとでかいのでミニチュアで表現してみたり、猫にも真っ黒いのがいるからシルエットにはちょうどいい、と自分のやりたいように演出をしました。ホントにやりたい放題やってます(笑)。こういう造作考えるのは結構楽しいです。

小山さん
小山

結果、反応は狙い通り!

おかげさまで多くのホームセンター様から前向きな話をいただき、売り場に置いていただいたり、ネット通販での扱いをしていただいたりしました。特にDIYショーで撮った写真がそのまま使用例として取り上げてもらえたのはうれしく、自分が手がけた商品がこのようにして広まっていくのは、本当にこの上ない感動でした。

小山さん
小山

黒い反射テープは各ホームセンターやウェブショップで販売中です。興味を持たれた方は、ぜひお試しください!

ご購入はこちらから
https://www.cushiony.jp/products/list.php?category_id=2424


おまけ:宣材写真special thanks おかん

ちなみにパッケージやリーフレットに使用されている写真は、実家の近所の公園や会社の前でiPhoneで撮ってます。私が自転車にまたがっているところを、後ろから私の母がカメラを構えて撮ってくれました。おかげさまで、この写真をパッケージにでっかく使わせてもらってます。あらためて感謝を申し上げたいと思います。

ちなみに、撮影協力はおかん(母)です。あらためて感謝しています。

※この記事の内容は、2020年2月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。

2020.03.05
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