コロナと戦う!第二の消毒液として注目される「界面活性剤」とは?
26
2020
May
コロナウイルスの消毒に、「界面活性剤」が有効なのではという研究が進められているのをご存じでしょうか。
いいものマガジンでは、『すっごい掃除水』がコロナ対策に有効という記事を紹介しました。
世界中でコロナとの戦いが行われている今、いいものマガジン編集部も「コロナ対策のためにできること」を広めていきたいと、さまざまな観点からの記事を紹介しています
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今回は、「界面活性剤」の研究の現状について紹介したいと思います。
INDEX
「界面活性剤」は新型コロナウイルスに対して有効性がある?
5月22日経済産業省は、以下5種類の界面活性剤(それぞれ含有量表示)が、コロナウイルスに対して有効と判断しました。
新型コロナウイルスに有効とされた5種類の界面活性剤
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
・アルキルグリコシド(0.1%以上)
・アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
・塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
このように判断されるに至った、これまでの経緯をご説明します。
始まりは「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」
私たちが参考にしたのは、「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」の見解です。
※4月の時点では「次亜塩素酸水」も可能性があるとして、調べられていました。
これは、経済産業省の要請を受け、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が行なっている研究だそうです。第1回は2020年4月16日に、第2回は同年5月1日に発表が行われました。
この検討委員会のミッションは、「新型コロナウイルス対応で品薄になっているアルコール消毒液の代替品として、一般家庭でも入手できるもので、一定数の消毒効果があるものを分析し有効性の評価を行うこと」です。
ただし「新型コロナウイルスへの消毒方法の評価に対する文献情報は見当たらない」というのが現状。
では、どのような研究を行い、「界面活性剤」や「次亜塩素酸水」が新型コロナウイルスに対して一定の消毒効果を有する可能性があると言っているのかを解説していきたいと思います。
消毒効果があること、かつ継続的な供給が可能なもの
最初に行なったのは、候補物質の選定です。消毒効果があるのはもちろん、現在の状況下において継続的に供給が可能であるという観点のもと、選出されたようです。
選定の際は、新型コロナウイルスと同様の型をもつコロナウイルス(SARSコロナウイルスなど)や、インフルエンザに対する抗ウイルス効果に関する文献情報をもとにしました。
そうして選定されたのが、以下です。
- 界面活性剤(台所用洗剤など)
→代表的な界面活性剤8種 - 次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)
→強酸性電解水、弱酸性電解水、微酸性電解水から4種 - 第4級アンモニウム塩
→代表的な化合物として塩化ベンザルコニウム
※原則として、物品に対する消毒を想定
検証試験はA型インフルエンザウイルスを使用
全13種類の候補物質については実際のウイルスを用いて検査することが必要ですが、そのためには相応の期間を要します。早急な対応が必要な現状を踏まえ、まずはA型インフルエンザを用いての実験が行われました。(界面活性剤についての表のみ表示します)
インフルエンザウイルスを用いて検証試験を実施した対象物質(資料3|P5)
サンプル番号 | 界面活性剤の種類の名称を示す用語 | 界面活性剤の区分 |
---|---|---|
界面活性剤① | 純石けん分(脂肪酸カリウム) | 陰イオン系界面活性剤 |
界面活性剤② | 直鎖アルキルベンセンスルホン酸ナトリウム | 陰イオン系界面活性剤 |
界面活性剤③ | アルキルグルコシド | 非イオン系界面活性剤 |
界面活性剤④ | 脂肪酸アルカノールアミド | 非イオン系界面活性剤 |
界面活性剤⑤ | ポリオキシエチレンアルキルエーテル | 非イオン系界面活性剤 |
界面活性剤⑥ | アルキルベタイン | 両性イオン系界面活性剤 |
界面活性剤⑦ | アルキルアミンオキシド | 両性イオン系界面活性剤 |
界面活性剤⑧ | 塩化ベンザルコニウム | 陽イオン系界面活性剤 |
同様の検査を4つの機関で行い、複数の試験結果に相関が認められたことから、試験は成立したとの判断がされています。気になる結果は以下のとおりです。
- 界面活性剤⑥アルキルベタインについては、ウイルス感染価の減少は見られなかった
- 界面活性剤④脂肪酸アルカノールアミドは2桁(99%)以上のウイルス感染価の減少が見られた。
- 界面活性剤⑧塩化ベンザルコニウムと、第4級アンモニウム塩①は2桁(99%)以上のウイルス感染価の減少が見られた。
- 界面活性剤①純石けん分(脂肪酸カリウム)は、3桁(99.9%)以上のウイルス感染価の減少が見られた。
- 上記以外の界面活性剤4種と次亜塩素酸水4種については、4桁(99.99%)以上のウイルス感染価の減少が見られた。
つまり、抗ウイルス効果のある物質として、界面活性剤のアルキルベタイン以外には有効性が認められたのです。これらの物質について、今後は優先的に新型コロナウイルスを用いた検証を進めるとしたのが、5月1日時点の発表でした。
5月23日時点で、界面活性剤5種類には「新型コロナに効果がある」と判断された
その後、5種類の「界面活性剤」と「次亜塩素酸水」について調査を続けた結果、「界面活性剤5種類は、新型コロナウイルスに有効である」とわかったというのです。
さらに、これらの界面活性剤を原料とした製品はすでに数多く流通していることも発表されました。
その中には『すっごい掃除水』も含まれています。みなさん、新型コロナウイルス対策に、今回の情報をぜひ役立ててもらえればと思います!
※そのほか、界面活性剤が含まれているリストはこちら
【参考資料|独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)】
※ 第1回新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会
※ 第2回新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会
※ インフルエンザウイルスを用いた代替消毒候補物資の 有効性評価にかかる検証試験の結果について
【参考資料|経済産業省】
※新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第一弾)
※この記事の内容は、2020年5月7日現在の取材と5月23日時点の情報を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。