自転車をかっこよく、使いやすくディスプレイ!安全性と使い勝手を考えた『WALIST‐ONE(ウォリスト‐ワン)』【開発秘話】
24
2023
Aug
DIY好きなら、ご存じの方や使ったことがある方も多いであろう『Walist(ウォリスト)』。
そんな『ウォリスト』と名前も形も似ているけれど、全然違う『WALIST-ONE(ウォリスト‐ワン)』が誕生しました。違いは、束ねて使うのが前提の『ウォリスト』に対して、『ウォリスト‐ワン』は1本使い専用ということ。
開発のきっかけやこだわりを開発担当者の河西さんに聞いてみました。
INDEX
1本使いにも安全性と収納力を!開発のきっかけ
1本使い専用の『ウォリスト‐ワン』を開発したきっかけを教えてください。
世の中には2×4材を立てられる突っぱりツールがたくさんあり、その多くは1本の柱を立てるのに使われています。一方、『ウォリスト』は2×4材を束ねて奥行のある棚を作ることを想定して開発しました。
1本で使うのが悪いとまではいえませんが、突っぱりツールを前方に荷重のかかる用途で使用する場合、すべり止めの限界を超えて前に倒れる可能性があるんです。『ウォリスト』の場合は束ねて使っていれば、基本的に自立しているのでジャッキにかかる負担は少ないですが、1本使いのときは倒れようとする力を常にジャッキが受け止めている状態なので。
なるほど。『ウォリスト』に限らず、突っぱりツールを前に荷重がかかる状態で使うのは倒れる危険性があるんですね。
最近はロードバイクの流行で、突っぱった柱に自転車をかけているケースが多くみられます。ロードバイクをかけようとすると、ハンドルの分、本体が柱より大幅に前に出るので、特に危険なのではないかと思っていました。常に前方に荷重が掛かって、この荷重が大きいほど倒れる可能性は高くなるので。
でも1本で使いたいという気持ちもわかるんです。複数本立てると場所を取るし、見ため的にもかっこよくない。そのうえ、木材は高騰している。
だから、1本使いで自転車をかけても問題ない突っぱりツール『ウォリスト‐ワン』の開発をはじめました。
1本使いで自転車をかけても安心なジャッキ作りから、開発がはじまったんですね。
取付も調整もラクラク!使い勝手を意識した商品開発
『ウォリスト‐ワン』の特長を教えてください。
最大の特長は使い勝手がいいことです。ほとんど工具を使わないので、取り付けがカンタンで高さ調整もラクラクなんです。
『ウォリスト-ワン』シリーズのパーツは、自転車ハンガー以外は全て工具不要、ビスを使わずに固定する仕組みです。残念ながら自転車ハンガーだけ、六角レンチが必要ですが、付属品として同梱してあるので、用意していただく必要はありません。
『ウォリスト』はドライバーでジャッキをあげる必要があったので、今回もそうだと思っていました。なぜ『ウォリスト‐ワン』はビスや工具を使わないようにしたんですか?
『ウォリスト』はそもそもが束ねる前提です。束ねて使ったとき、天井と2×4材の間に手が入りにくいと考え、狭いところで回すのが難しいつまみではなく、ねじをドライバーで回す構造にしました。『ウォリスト-ワン』は1本使い専用で、つまみでも問題ないので、ドライバーで回すねじではなく、手で回せるつまみにしました。
強力ジャッキ以外のパーツもつまみにした理由は、使い勝手を重視したからです。例えば自転車をかけるとき、どの位置がいいかってかけてみないとわからないですよね。それに、使っているうちにもう少し低い方がいいなって変えたくなることもあると思うんです。そういうとき、ビスで固定してあると位置を変えるのが面倒で諦めてしまうかもしれませんが、『ウォリスト‐ワン』ならつまみを回すだけで位置を変えられます。
設置時に位置を確定させておかなくていいので、気軽に設置できて、DIYのハードルも下がるのではないかと考えています。
私はベースをやっていて、かける収納に憧れているんです。でも、ベースをかける位置を決めなくちゃ作れないっていうのがネックで踏み出していませんでした。ほとんど毎日使うものだから、自分が一番使いやすい位置にしておきたいけれど、それを一発で決めるのは難しいと感じていたんです。ビスで固定した場合、位置を変更できないことはないですが、穴があいてしまうので、気になると思うし…。
だから、ビスを使わないってすごい嬉しいです。
『ウォリスト-ワン』が自転車のディスプレイに最適な理由
なぜ自転車ハンガーだけ六角レンチが必要なんですか?
自転車を理想の角度でかけるためです。
自転車ハンガーには自転車のフレームの上部分、トップチューブをかけるのですが、ここの角度って自転車によって違うんです。地面に平行なものもありますが、斜めのものも多い。斜めのものをかけたとき、自転車ハンガーが地面に対して平行だと、かけた自転車が傾いてしまいます。それでもよければ問題はないのですが、やっぱりかっこよく見せたいですよね。だから、自転車ハンガーの角度を変えられるようにしました。
ここには荷重がかかるので、しっかり締めるためにどうしても六角レンチが必要だったんです。
なるほど。このひと手間で自転車をよりかっこよくディスプレイできるなら、六角レンチで締めるくらいは頑張れると思います!
自転車をかける部分の角度が変えられない商品でも、本体を斜めに取り付けることで自転車を地面と平行にできないことはないのですが、取り付け前の手間が増えてしまいます。『ウォリスト-ワン』なら、取り付けて、実際に自転車をかけてみてから固定できるので、理想の角度が簡単に実現できます。上下に2台並べるときは特に平行の方がかっこいいので、こだわりポイントです。
たしかに、2台並んでいるときはバラバラの角度より揃っているほうがかっこいいですね!
自転車のディスプレイでは、ハンドルも真っすぐの方がかっこいいのですが、『ウォリスト-ワン』ならそれも簡単に実現できます。パッケージ裏の説明を参考に、ハンドルの側面が壁に軽く当たる位置に2×4材を立てていただくことで、ハンドルが真っすぐのままディスプレイできます。
2×4材はハンドルの外側の長さ÷2-190mmの位置に立てると書いてあります。突っぱりツールは壁にぴったりくっつけて設置するイメージがありましたが、『ウォリスト-ワン』は壁ぴったりに突っぱらないんですね。
『ウォリスト-ワン』の自転車ハンガーはアームが短いので、ハンドルの分だけ壁から離して突っぱる必要があります。
開発当初から自転車を安心してかけられることに重きをおいていたので、『ウォリスト-ワン』は前に荷重がかからない仕組みから考えました。それには自転車を柱から離れすぎない位置にかけるのが有効だったのですが、アームを短くするとハンドルが柱の裏側に飛び出てしまう…。それなら、ハンドルは飛び出たまま、柱を壁ぴったりじゃないところに突っぱれるようにすればいいのではないかと思いついたんです。ハンドルの分、壁面から数cm~10cm程度離れることになりますが、強力ジャッキの構造上、問題ありません。
アームを短くすることで、安全性と見た目を良くしたんですね。
自転車をかけることを考えて開発しただけあって、『ウォリスト-ワン』は自転車を部屋にディスプレイしたい方にぴったりの商品ですね。
耐荷重は50㎏!『ウォリスト-ワン』がビスなしでも強いワケ
ビスを使わないのが特長の『ウォリスト‐ワン』。ビスや工具を使わないのに耐荷重が50kgっていうのも驚きのポイントなのですが、なぜそんなに強いんですか?
理由はガッチリ固定できるからです。ジャッキにもパーツにもガッチリ固定できる秘密があるので、順を追って説明しますね。
まず強力ジャッキから。『ウォリスト』の突っぱりジャッキと比べていただくとわかりやすいですが、強力ジャッキは全方向にツバがついていて、下部金具にも同じようにツバがついています。このツバが肝なんです。
突っぱりツールを前に荷重がかかる状態で使う危険性を最初にお話しましたが、強力ジャッキは倒れそうになったとき、ツバが天井を押し上げることで倒れを防止します。他にも、押し上げる力を逃がさないよう、バネを入れていなかったり、天井の接触部分を面ではなく3本線にすることで、より滑りにくくしたり、強力ジャッキには荷重がかかっても大丈夫な秘密がつまっています。
『ウォリスト-ワン』の強力ジャッキが1本使いでも安心な理由がわかってきました。
たった1cmのツバがそこまでの働きをしてくれているなんて驚きです。
次にパーツの秘密です。
自転車ハンガーを見るとおわかりいただけると思いますが、『ウォリスト-ワン』は全てのパーツが短くできています。荷重がかかる部分が柱から近いことで、前に向かう荷重は数%、ほとんどの荷重は下にかかるようにできているんです。短いことで線材の直径が8mmとスタイリッシュな見た目にすることもできました。
このパーツも『ウォリスト-ワン』以外では見たことない形ですもんね。こだわりがつまっているのがわかります。
このコ型金具には結構苦労しました。4本ではなく2本で回転しながら取り付けられるようにしようとしたり、爪なしで圧力だけで固定しようとしたり、何回も挫折した結果、今の形になりました。苦労した分、愛着がわいてしまって、私や協力工場の方はカニ足くんって呼んでいます(笑)。
完璧だと思っても課題が出てくるのが商品開発
いよいよ発売間近ですね。準備はばっちりですか?
それがハプニングが起きてしまって…。強力ジャッキのゴム部分が消しゴムのように削れてしまったり、その前は塗装にムラがあったりして、いま必死に張り替えや調整をしています。
直前でも問題が起きるんですね。そういえば、キャスタースリッパも発売ギリギリまで微調整に追われていたというお話がありました。
試作でいい商品ができたと思ってから、ハプニングが起こるのは実はよくあることなんです。
実は商品開発って、商品の形を決めるまでよりも、形が決まってからのほうが大変なんです。調整して、これで完璧と思っても、想像もしていないダメなところが出てきたり、調整したことによって違う問題が出てきたりします。
今回のゴムの問題も色移りしないか、摩擦で削れてしまわないかなど、実際に使用するときと同じ条件で何本も突っぱって品質を確認していました。だから、社内で指摘があったときは驚きました。
塗りムラの問題についても、機械で塗装しているので、どこに塗料が入りづらいかはやってみないとわからないんですよね。塗れていないところがあったからと向きを変えると、次は垂れてしまうなんてこともあります。サンプルを作るだけではわからないことがたくさんあるんだと改めて思います。
これまでたくさんのヒット商品を開発してきた河西さんでもそうなんですね。
逆にいうと長年やってきているおかげで、工場や塗装屋さんとの信頼関係ができあがっていて、一緒に頑張っていただけます。今回も何度も足を運びました。お客様に喜んでいただける商品を作りたいので、妥協はできませんね。
なるほど。『ウォリスト-ワン』への想いやこだわりを知れて、より使ってみたくなりました。たくさんの方に知っていただく、使っていただくために、私も広報活動頑張ります!
※この記事の内容は、2023年7月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。